―――バゼットの隠れ家
バゼット「さてと、荷物もこれだけあれば十分でしょう」
バゼット「では……」
ランサー「よう」
バゼット「ランサー?」
ランサー「坊主のとこに行くのか?」
バゼット「ええ。仕事と新たな住みかが得られるまでですが」
ランサー「そっか。がんばれよ」
バゼット「言われずとも最善を尽くします。それでは」
―――衛宮邸
士郎「離れを使うか?」
バゼット「いえ、和室のほうが落ち着きます。こちらで」
士郎「セイバーもいるけど」
バゼット「気にしません」
士郎「そうか」
バゼット「これから短い間でしょうがお世話になります」
士郎「なにか困ったことがあればなんでもいってくれ」
バゼット「はい」
士郎「また呼びにくるよ。ゆっくりしててくれ」
バゼット「わかりました」
バゼット「ふむ……早くこの生活から抜け出し……ランサーと……」
バゼット「って、私はなにを考えているのですか!!」
バゼット「しっかりしないと」
バゼット「……」ペラッ
バゼット「……いい仕事がないですね」
バゼット「……」ペラッ
バゼット「はぁ……やはり教会に斡旋を……」
バゼット「……」
カレン『では、左腕をよこしなさい』
バゼット「駄目だ」
バゼット「自力でなんとか……」
バゼット「……」ペラッ
セイバー「―――バゼット、いますか?」
バゼット「え?」
セイバー「ご挨拶をと思いまして」
バゼット「ええ。どうぞ」
セイバー「失礼します」
バゼット「これからお世話になります」
セイバー「いえ」
バゼット「それで挨拶とは?」
バゼット(なんらかの牽制か……?)
セイバー「えーと……その、お願いが」
バゼット「なんでしょう?」
セイバー「この屋敷の警備は私が行っています」
バゼット「はい」
セイバー「なので、貴女には何もしてほしくない」
バゼット「警備を、ということですか?」
セイバー「そうです」
バゼット「貴女の仕事を奪うつもりなど毛頭ありません。安心してください」
セイバー「それはよかった。話がわかるメイガスで助かりました」
バゼット「そんなことはありません」
バゼット「それにしてもこの屋敷には警備をするほどの賊が侵入してくるのですか?」
セイバー「可能性はあります」
バゼット「……」
セイバー「では、これで」
バゼット「わかりました。後ほど」
セイバー「はい」
バゼット「ふむ……」
バゼット「警備か……」
バゼット「悩んでいても仕方ありません」
バゼット「……」
バゼット「ここにしましょう」
数日後 デパート敷地内駐車場
警備員「じゃあ、ここで交通整理をしてもらうから」
バゼット「わかりました」
警備員「やりかたは覚えている?」
バゼット「はい」
警備員「よろしくね」
バゼット「まかせてください」
バゼット「……」
バゼット「不審者がきたら、必ず制圧してみせましょう」グッ
ワイワイ……ガヤガヤ……
バゼット「子連れや恋人が多いですね」
バゼット「……」
ランサー『向こうに行こうぜ、バゼット』
バゼット『あーん、まってぇ』
バゼット「……はっ!いけない、仕事に集中しなければ」
バゼット「ピッ!ピッ!」
バゼット(通行人が……車両をとめて……)
バゼット「どうぞ」
通行人「どうも」
バゼット「……ふぅ」
バーサーカー「……」ズンズン
イリヤ「今日はここでお買い物よ、セラ、リーゼリット」
セラ「何もこのような場所で……」
バゼット「止まってください」
リズ「なんで?」
バゼット「車がきます」
イリヤ「構わないわ。バーサーカー、押し通りなさい」
バーサーカー「■■■―――!!!」
バゼット「こら!!植え込みからははいらないでください!!」
イリヤ「だって、遠回りになるじゃない」
バゼット「いけません。規則です」
イリヤ「面倒くさいわね……」
バゼット「守ってください」
イリヤ「はいはい」
セラ「いきましょう」
イリヤ「そうね」
リズ「イリヤ、お菓子かってもいい?」
イリヤ「300円までね」
リズ「うん。うまい棒30本買う」
バーサーカー「■■■―――!!!」
バゼット「……アインツベルンも随分と俗なところへ」
ギルガメッシュ「―――ふははは!!」
バゼット「……とまってください」
ギルガメッシュ「なんだと?」
バゼット「ここは進入禁止です。入り口にお回りください」
ギルガメッシュ「ほぉ?王の通る道を雑種ごときが指示するか?」
バゼット「……」
ギルガメッシュ「我が通る道こそ、真の大道!!それを否定するとは……死ぬ覚悟はあるのだな?」
バゼット「回ってください」
ギルガメッシュ「くどい!!我の進行を妨げるだけでなく、歪めようというかっ!!」
バゼット「回れ」
ギルガメッシュ「我は王!!下民の辿った道など歩めるか!!足が腐る!!」
バゼット「回れ」
ギルガメッシュ「黙れ!!通る!!」
バゼット「―――不審者と判断」
ギルガメッシュ「なに―――」
バゼット「無様に―――回れっっ!!!」
バキィィ!!!
―――夜 衛宮邸
凛「で、クビ?」
バゼット「はい。警備員とは絶対に手を出してはいけないとか……」
桜「あー……」
バゼット「衛宮士郎」
士郎「ん?」
バゼット「保証人のかたに損害賠償請求があるのですが」
士郎「え……?」
バゼット「お願いします」
士郎「ちょっと……」
凛「うわ……殴った相手、相当きれてるわね。治療費なんて法外もいいとこじゃない」
桜「前歯が9本折れた……?そんな馬鹿な……」
バゼット「……また職を探さないと」
士郎「誰を殴ったんだよ……これ……」
翌日 街
バゼット「ふぅ……」トボトボ
ランサー「よぅ!」
バゼット「ランサー」
ランサー「仕事、見つかったか?」
バゼット「まだです」
ランサー「そうか。いや、その俯いた顔をみりゃあ分かるけどよ」
バゼット「……」
ランサー「ちょっと付き合えよ」
バゼット「なんですか?私は職探しが……」
ランサー「いいからいいから」
バゼット「もう……少しだけですよ?」
ランサー「おう」
―――喫茶店
バゼット「それで、なんですか?」
ランサー「いや。特に用事なんてないけど」
バゼット「では、帰ります」
ランサー「まてまて!なんでそうなるんだよ!」
バゼット「無駄な時間は過ごしたくありません」
ランサー「おいおい。少しは肩の力抜けって、そんなことじゃあ見つかるもんもみつからないぜ?」
バゼット「しかし……」
ランサー「なにをそんなに焦ってんだよ?」
バゼット「……」
ランサー「もっと凛々しくしろ。お前がそうやって萎んでると、こっちの欲まで萎えちまうだろうが」
バゼット「なんですか……それは……」
ランサー「いい女はもっとふてぶてしく居るもんだ。それに男の上にのって、淫らになってるほうがよっぽどいいぜ」
バゼット「不潔です」
ランサー「そういうなよ」
バゼット「全く。こんな不毛な会話をしている暇など……」
ランサー「そうだ。これ」スッ
バゼット「これは……?住所?」
ランサー「さっき拾ったんだ、その紙。その場所にいけば宝物があるかもな」
バゼット「興味はないですね」
ランサー「いいから、行って来いって」
バゼット「……」
ランサー「な?」
バゼット「わかりました。貴方がいうなら」
ランサー「そうか。じゃ、坊主によろしくいっといてくれ」
バゼット「はい」
バゼット「……ここはどこでしょうか?」
バゼット「ここからそう遠くはないようですが……」
―――清掃会社
バゼット「……」
面接官「では、バゼットさん」
バゼット「はい」
面接官「いつから働けますか?」
バゼット「明日からでも」
面接官「それは嬉しい。是非ともお願いします」
バゼット「あの……殆ど面接をしませんでしたが、そんな即決でいいのですか?」
面接官「ええ。なにせランサーさんの紹介ですから」
バゼット「ランサー……」
面接官「では。お願いしますね」
バゼット「はい。期待に応えられるよう、全力で望みます」
―――オフィスビル 男子トイレ
バゼット「ここか」
バゼット「では……」
バゼット「……」キュッキュッキュ
バゼット「順番に磨いていけばいいだけですか……なんとも温い……」
バゼット「でも、ランサーの顔を潰すわけにも……」
バゼット「しっかりやろう」
バゼット「……」キュッキュッキュ
バゼット「よし」
バゼット「次の階へ」
バゼット「……」
バゼット「しかし、つまらない……」
―――夕方 清掃会社
バゼット「ただいま、戻りました」
社員「おかえりなさい。悪いけど、もうひとつの現場に行ってもらえる?」
バゼット「今からですか?」
社員「お願いします」
バゼット「了解しました」
社員「急に一人、休んじゃって。すいませんがよろしくお願いします」
バゼット「はい」
バゼット「次は……」
バゼット「病院ですか……」
バゼット「はぁ……」
バゼット「つまらない……」
―――病院 男子トイレ
バゼット「……」キュッキュッキュ
ギルガメッシュ「ふぅー……くそ、どうして我がこんな場所にこなくては……」
バゼット「すいませんが清掃中です」
ギルガメッシュ「それもこれもあの女の……」
バゼット「出て行ってください」
ギルガメッシュ「ええい!!やかましい!!我の厠はここだ!!」
バゼット「清掃が終わるまで別階のトイレを利用してください」
ギルガメッシュ「なんだとぉ……!!貴様、我は今、最高に気分が悪い。無残に臓物を撒き散らせたくなければ、去れ」
バゼット「貴方が去れ」
ギルガメッシュ「おのれ……どこの清掃会社だ?今すぐ買収してお前ごとき、解雇にしてやるぞ?」
バゼット「……」
ギルガメッシュ「薄汚い作業着に帽子だ。ふん。路傍の草のほうがまだ清潔だ」
バゼット「……それは侮辱ですか?」
ギルガメッシュ「いいや、悲哀の句だ。痴れ者めが」
バゼット「……」
ギルガメッシュ「どけっ」
バゼット「まだ清掃の途中―――」
ギルガメッシュ「ほれほれ、もう出してしまったわ。ふはははは」ジョボボボ
バゼット「……っ」
ギルガメッシュ「最高に気分がいい!!ふふ、ここで糞便もしておいてやろうか?」
バゼット「貴様……」
ギルガメッシュ「王の粗相を処理できるなんて光栄であろう?あははははは!!」ジョボボボ
バゼット「そうですね……汚物は始末しなければ」
ギルガメッシュ「よく出るな。昼に飲みすぎたか……」ジョボボボ
バゼット「……」グッ
ギルガメッシュ「ん……?」
バゼット「清掃―――開始っ!!」
ギルガメッシュ「おまえは―――?!」
―――翌日 衛宮邸 縁側
バゼット「……」
セイバー「どうしたのですか?仕事では……?」
バゼット「失いました」
セイバー「え……」
バゼット「……」ウルウル
セイバー「メイガス……」
バゼット「……今日は少しだけ休みます」
セイバー「そうですか」
バゼット「はぁ……」
セイバー「気を確かに。出来ることをしましょう」
バゼット「はい……そうですね」
セイバー「シロウが昼食を用意してくれています。行きましょう」
バゼット「ええ……」
―――居間
セイバー「……では、屋敷の巡回に行ってきます」
バゼット「よろしくお願いします」
バゼット「……」
バゼット「戦いに身を窶してきた結果がこれですか……」
バゼット「やはり私には表の仕事など……」
バゼット「はぁ……」
大河「こんにちはー!!!」
バゼット「ん?」
大河「あら?」
バゼット「どうも」
大河「バゼットさん、でしたっけ?」
バゼット「はい」
大河「どうしたんですか?仕事じゃあ……」
バゼット「……失いました」ウルウル
大河「―――なるほどねえ……それは……うん、仕方ないかも」
バゼット「……」
大河「結局、バゼットさんって接客というか人に何かをするのって苦手なんじゃないですか?」
バゼット「そうですね。今まで人に尽くす、という行為はあまりしてこなかった。正直、どうしていいか分かりません」
大河「飲食系ほどじゃないにしろ警備員も清掃員もそれなりに人と接するから」
バゼット「そのようです」
大河「日本の仕事なんてそんなものですけど」
バゼット「……」
大河「どんなことなら自信あるんですか?」
バゼット「……戦闘ですね」
大河「戦闘……つまりボディーガード的な?」
バゼット「ええ。ですが、この国では『暴力』そのものが禁止されている。護衛するにしても『暴力』は厳禁という、なんとも狂ったシステムです」
大河「……」
バゼット「守るためには先手必勝。毒を見つければ毒が近づく前に排除する。それがスタンダードだと思っていました」
大河「バゼットさんって……兵士だったの?」
バゼット「似たようなものですね」
大河「ふーん……あ、だったら自衛官とか」
バゼット「それも考えましたが、私には向いていないでしょう」
大河「どうして?」
バゼット「この国の兵士は行動に制約が多すぎます。いざというときに自分の意思で行動できないのが私にとってはマイナスです」
大河「そ、そう……」
バゼット「一体、どうすればいいか……」
大河「うーん……じゃあ、人に接するとこから始めてみたらいいんじゃないですか?」
バゼット「と、いうと?」
大河「今の話を聞く限り、バゼットさんって友達とはその……あまり……」
バゼット「ええ、友人と呼べるだけの間柄の人物はこの国にはいません」
大河「そこですよ」
バゼット「どこですか?」
大河「バゼットさんはコミュニケーションが苦手なんです。そこを克服できればきっといい仕事にも出会えると思います」
バゼット「どうすればいいのでしょう?」
大河「丁度、今……」ゴソゴソ
バゼット「……?」
大河「これです」
バゼット「それは?」
大河「うちの学校で臨時職員を募集しているんですよ」
バゼット「ほぅ」
大河「どうです?」
バゼット「……教員免許は?」
大河「あれ?ないんですか?この前、士郎がバゼットさんは教員の資格ももっているからこの家に置いておいても問題ないって……」
バゼット「あ、ああ。もっていました。自分の資格があまりにも煩雑になっていて、忘れていました」
大河「よかった」
バゼット「しかし、教師なんて……」
大河「いいじゃないですか。何事も勉強と経験ですよ」
バゼット「……わかりました。そこまで言うのでしたら」
大河「やったぁ!じゃあ、早速書類をつくりましょう」
―――夜 居間
士郎「ええ!?バゼットがうちの教員に!?」
凛「ぶぅぅぅ!!」
桜「姉さん、汚いです」
凛「ごっほごほ……!!正気なの!?」
バゼット「藤村大河の勧めもありましたし」
士郎「藤ねえ……」
凛「学校に死人が出るわ……」
セイバー「そうですか。教育者として彼女の厳格な物腰は相応しいと思いますが」
桜「そ、それはそうですけど」
士郎「で、なんの担当なんだ?やっぱ―――」
バゼット「保健体育です」
士郎「だよな」
バゼット「……来週からよろしくお願いします」
凛「フラガマクレミッツ先生の誕生か……」
―――バゼットの自室
バゼット「……もしもし?」
ランサー『どうした?電話なんて珍しいな!』
バゼット「いえ。仕事が決まったので、報告を」
ランサー『なんでだよ?』
バゼット「だって、前回は貴方の顔を潰してしまう結果に……」
ランサー『ちいせえことは気すんなって』
バゼット「ランサー……」
ランサー『で、なんの仕事だ?』
バゼット「保健体育の教員です」
ランサー『お!そうか!!じゃあ、おれが性教育の実技をお前と―――』
バゼット「お、おやすみなさい!!!」
バゼット「全く……あの人だけは……」
バゼット「でも……もう失敗は許されません……」
バゼット「ランサーのためにも……!!」
―――翌週 通学路
凛「そうだ、バゼット」
バゼット「なんでしょうか?」
凛「教員免許は?」
バゼット「ここに」
士郎(本当にもってたんだ)
バゼット「大至急、用意させました」
凛「そう」
桜(偽造……?)
凛「ま、しっかりね。教師が流血事件なんて起こしたらしゃれにならないから」
バゼット「心配はいりません。我慢します」
士郎「絶対にしちゃだめだ」
桜「はい」
バゼット「……わかりました」
凛「大丈夫なんでしょうね……」
―――学校 校庭
バゼット「今日から臨時教員として教鞭を振るう、バゼット・フラガ・マクレミッツです」
蒔寺「なんか怖そうだな……」
三枝「うん……」
氷室「しかし、中々の強者とみた」
凛「……」
バゼット「では、みさなんの身体能力をみておきたい。今日は体力測定をおこないます」
三枝「やだなぁ……」
バゼット「では、まずは42.195キロを走破して―――」
凛「せんせー!!!それはむりでーす!!」
バゼット「む……そうですか?」
凛「普通にしましょう、普通に」
バゼット「では、100メートル走から。12秒以内で走れないものはフルマラソンを―――」
凛「むちゃでーす!!」
氷室「すべて冗談になのだろうが、真顔だから怖いな……」
蒔寺「―――しゃぁ!!ゴール!!」
バゼット「ほぅ。中々の走力ですね」
蒔寺「ふふーん。まあね」
バゼット「なにかしているのですか?」
蒔寺「うん。冬木の黒豹とは私のことですぜ?」
バゼット「二つ名があるのですか……それはそれは」
氷室「一応は陸上部のエースだからな」
蒔寺「一応っていうな」
バゼット「貴方も?」
氷室「ええ。私は高飛びのほうですが」
バゼット「ふんふん」
美綴「遠坂、勝負だ」
凛「貴方の勝ちでいいわ」
美綴「なんでだよ!?」
バゼット「このクラスは中々、面白いですね」
―――放課後 職員室
大河「お疲れ様、バゼットさん。どうでした?」
バゼット「ええ。有意義な一日でした」
大河「不思議な魅力があるものね。うまくやっていけそう?」
バゼット「子どもたちとの距離感がまだ掴めませんが、それでも向こうから私を迎えてくれようとしているので」
大河「いい子達でしょ?」
バゼット「ええ。貴女も随分と慕われているようで」
大河「え?そう?」
バゼット「穂群の虎とか……藤村タイガーと」
大河「……だれが言ってたの?」
バゼット「衛宮士郎が」
大河「……私、用事が出来たから」
バゼット「ええ」
大河「士郎!!どこだぁぁ!!!」
バゼット「さて、ここにはもう用事はない。帰りましょう」
―――校庭
バゼット「……」
蒔寺「あ、せんせー!!」
バゼット「はい?」
氷室「おい、楓。よせ」
蒔寺「いいじゃんいいじゃん」
三枝「でもぉ」
バゼット「なにか?」
蒔寺「いやさ、先生の実力をみたいんだな、これが」
バゼット「実力……?」
氷室「申し訳ない。この馬鹿が貴女の身体能力をみたいと言い出して……」
三枝「ごめんなさい」
蒔寺「なんだよぉー!!ゆきっちもめかねも見たいだろ!?」
氷室「見たいが、先生の事情もあるだろう」
バゼット「いいでしょう。時間はありますし、見たいというなら……見せましょう」グッ
バゼット「―――はっ!!」シュバッ
氷室「……」
三枝「うそ……」
蒔寺「おいおい……短距離、高飛び……全部、世界記録じゃん……」
バゼット「ふぅ……まあ、こんなところですか」
氷室「ああ……あの……」
バゼット「なんですか?」
氷室「こ、顧問になってくれませんか?!い、いや、臨時教員だから顧問は無理か……で、ではコーチという形でも!!」
三枝「おねがいします」
蒔寺「なんかすんげーかんどうした!!私からもよろしく!!」
バゼット「しかし……」
氷室「練習を見てくれるだけで構いません」
三枝「はい!」
バゼット「いいでしょう。見るだけですよ?」
蒔寺「ひゃっほー!!!これで全国も夢じゃないぜー!!!」
凛「―――で、士郎、今晩はどうするの?」
士郎「そうだなぁ」
バゼット「もっと腕の振りをはやく!!」
蒔寺「は、はい!」
凛「え?」
士郎「なんだ……?」
バゼット「踏み込みに力がない!!そんなことでは壁を越えることなど不可能です!!」
氷室「くっ……!!は、はい……!!」
凛「……なにあれ?」
士郎「しらないよ」
バゼット「そこぉ!!ちゃんと片付けておくように!!身の回りの整理もできずに高みにはいけません!!」
三枝「すいません!!すぐにぃ!!」
バゼット「……」
士郎「先生、してるな」
凛「そうね……」
―――衛宮邸
士郎「バゼット、すごいな」
バゼット「なにがですか?」
凛「もう生徒の心をキャッチしてるじゃないの」
セイバー「そうなのですか」
バゼット「いえ。そのようなことは……」
ライダー「意外と、教師が向いているのかもしれませんね」
凛「でも、あれはあの陸上部だからいいだけで、他にいくと嫌がられるかもね」
桜「そんなことないと思いますけど……」
バゼット「指導するとは難しい。確かに私はただ怒鳴っていただけですし」
士郎「バゼット……」
バゼット「まだまだ、学ぶべきことは多い。貴女から」
大河「え?私?」
バゼット「ええ。お願いします」
大河「ふふーん。ま、大船に乗った気でいてください」
―――数日後 体育館
バゼット「……では、二人組みになってください。今からバドミントンでラリーをしてもらいますから」
蒔寺「かねー!やろうぜー!!」
氷室「うむ」
バゼット「……」
沙条「あの」
バゼット「はい?」
沙条「余りました」
バゼット「そうですか」
沙条「……」
バゼット「……」
沙条「あの」
バゼット「なんですか?」
沙条「私は誰と組めば……?」
バゼット「知りません」
凛「ちょっと、先生」
バゼット「はい?」
凛「先生がやってあげないでどうするんですか」
バゼット「私ですか」
沙条「お、お願いします」
バゼット「……いいでしょう」グッ
沙条「……」ドキドキ
バゼット「行きますよ……」
沙条「はい」
バゼット「スマッ死ュ!!!」バシュン!!
沙条「え―――」
バキィィィ!!!
バゼット「……む?」
三枝「きゃぁ!!」
蒔寺「しんだぁ!!」
―――保健室
沙条「ん……?」
バゼット「気づきましたか」
沙条「あれ……私は……?」
バゼット「気を失っていたのですよ」
沙条「そうですか……」
バゼット「……もう大丈夫ですね?」
沙条「……」
バゼット「……なにか?」
沙条「いえ……」
バゼット「……何もなくて、その表情はありえない」
沙条「え?」
バゼット「話せないというなら、いいですが」
沙条「あの……私……友達がいないんです」
バゼット「私もです。それがなにか?」
沙条「あ……えと……悩みなんですけど……」
バゼット「友達がいないのが悩みと?」
沙条「はい。だから、二人組みとかつくれなくて……」
バゼット「ふむ……それはそんなに辛いことですか?」
沙条「ええ、何かと……」
バゼット「友人なんてはっきりいって不要です」
沙条「え?」
バゼット「一人でいるほうが強くなれる場合が多い」
沙条「……」
バゼット「いないなら、いないなりに工夫をしたほうがいいでしょう」
沙条「で、でも……もう休み時間に寝たフリをするのはいやなんです」
バゼット「では、本当に寝てしまえばいい。体力も温存できていいではありませんか」
沙条「……」
バゼット「次の授業で眠気もなくすっきりした頭で勉学に向かうことが出来ますよ?」
沙条「そういうことでは……」
バゼット「では、どういうことですか?」
沙条「お昼休みにトイレでお弁当もやめたいんです」
バゼット「トイレで食事ですか?」
沙条「はい……」
バゼット「すばらしく効率的ではありませんか」
沙条「は、はい?」
バゼット「栄養を摂取しながら余分なものはそのまま排泄する。時間に無駄がありませんね」
沙条「……」
バゼット「それは実践し続けるべきです。私も見習いましょう」
沙条「先生……?」
バゼット「いや、しかし、食べている最中に催すか……それが問題ですね」
沙条「……ふふっ」
バゼット「なにか?」
沙条「変な先生……。面白いですね」
バゼット「そうですか?私は真剣に考えていますが」
沙条「少し元気がでました」
バゼット「体調は万全のようですね」
沙条「はい」
バゼット「それでは私は職員室へ……」
沙条「あ、あの」
バゼット「なんですか?」
沙条「ま、またなにかあったら相談してもいいですか?」
バゼット「ええ、私でよければ」
沙条「ありがとうございます」
バゼット「いえ」
沙条「それでは」
バゼット「お大事に」
バゼット「ふむ……」
バゼット「子どもの笑顔というのも、悪くはありませんね」
―――翌日 学校 廊下
沙条「先生」
バゼット「ええと……」
沙条「沙条。沙条綾香です」
バゼット「ああ。おはようございます」
沙条「はい」
凛「……」
美綴「どうした?」
凛「いや。あの子が誰かに懐いているのが珍しくて」
美綴「沙条か。確かにな」
凛「……」
バゼット「では、また」
沙条「はい」
凛「いい先生……なのかしら……?」
美綴「だと思うけど。綺麗だし、生徒を惹きつけるだけのものは持ってると思う」
―――昼休み トイレ
バゼット「よし。今日から……実践です」
士郎「バゼット?」
バゼット「衛宮士郎」
士郎「弁当を持ってどうしたんだ?」
バゼット「効率的に摂取と排泄を行う為にトイレで食事をしようと思いまして」
士郎「なにぃ!?」
バゼット「では、これで」
士郎「まてまて!!」
バゼット「なんですか?」
士郎「そういうことするな!!こっちこい!!」
バゼット「ど、どこへ?」
士郎「せめて食堂で食べろ!!」
バゼット「しかし……!!」
―――食堂
バゼット「……」モグモグ
士郎「あのなぁ、教師っていう自覚を持てよ」
バゼット「もっています」
士郎「嘘だろ……」
宗一郎「バゼット先生」
バゼット「どうも」
士郎「葛木先生……」
宗一郎「午後に職員会議があります」
バゼット「ありがとうございます」
宗一郎「……昼休みにも生徒の話をきいているのですか?」
バゼット「ええ」
宗一郎「なるほど。まだここに来て日が浅いのにもうそこまで生徒に信頼を……」
バゼット「……?」
宗一郎「貴女の素質には羨望を向けざるを得ません。それでは」
―――放課後 廊下
バゼット「……」スタスタ
沙条「先生」
バゼット「ああ……えっと、綾香」
沙条「あの……相談が……」
バゼット「いいでしょう」
沙条「えと……どこで話しましょうか?」
バゼット「ここでいいじゃないですか」
沙条「いや、その……人に聞かれたくないので」
バゼット「では、私にも言うべきではない」
沙条「え……」
バゼット「では」
沙条「待ってください!!聞いてください!!」
士郎「またやってるな」
桜「相談を受けてますね」
―――空き教室
バゼット「それで、相談とは?」
沙条「あの……私……好きな人がいるんです」
バゼット「好きな人……ですか」
沙条「でも……あまり話したことがなくて……」
バゼット「では、その男性のどこに惚れたのですか?」
沙条「えっと……ひとめぼれ……」
バゼット「ふむ……」
沙条「それでその……どうしたらいいかなって……」
バゼット「綾香はどうしたいのですか?」
沙条「え?!」
バゼット「そこを聞かないことには、どうしようもありません」
沙条「そ、それはもちろん……仲良くなりたい……です」
バゼット「交際したいと?」
沙条「は、はい……」
バゼット「なるほど……ところでどうして私に?」
沙条「先生なら……その経験もしているかなぁって」
バゼット「確かに仕事上、何回か経験はありますが、貴女の参考にはならないでしょう」
沙条「仕事上……?」
バゼット「ええ。とても愛のある性交とは―――」
沙条「な、なんの話をしているんですかぁ!!」
バゼット「え?」
沙条「も、もう……」
バゼット「ですが、私から言えるのは一つです」
沙条「それは……?」
バゼット「男女間の恋愛など面倒なだけです。やめたほうがいい」
沙条「……」
バゼット「日が経つにつれて互いの心中に積もるのは愛情ではなく、憎悪。妬み。疑心。はっきりいってメリットなどありません」
沙条「え……」
バゼット「向こうから告白してくるまで待ちましょう。惚れさせれば勝ちです」
バゼット「惚れさせればこちらが相手はこちらの都合で動いてくれる。操り人形にしてしまえばまだ、メリットは……」
沙条「そ、そんなのいやですっ!!」
バゼット「そうですか……」
沙条「でも、惚れさせることって……できるんですか?」
バゼット「簡単です」
沙条「それは先生が……綺麗だから……」
バゼット「いえ、貴女でも……誰でもできます」
沙条「本当ですか?」
バゼット「ええ。試してみましょうか?」
沙条「ど、どこで……?」
バゼット「ここで、あなたに」
沙条「そ……それは……あの……」
バゼット「行きますよ……綾香……?」
沙条「せ、せんせい……だめ……そんな……」
バゼット「いきます……」グッ
沙条「せ、せんせ―――」
ドゴォォォン!!!
沙条「え……?壁にあなが……?」
バゼット「―――こうなりたくなければ、私のものになりなさい」
沙条「……」
バゼット「返事は?」
沙条「は、はい!!」
バゼット「ほら、簡単です」
沙条「え……?」
バゼット「所詮は人間。勝てないものには屈するしかない」
沙条「……」
バゼット「恋に駆け引きなど不要。力でねじ伏せればいい」
沙条「あの……」
バゼット「今のように」
沙条「……な、なるほどぉ……」
バゼット「がんばってください」
沙条「つま、り、勢いが大事……なんですね?」
バゼット「ええ」
沙条「……」
バゼット「ここまでして折れてくれないようなら相手が上手だったと思うしかないでしょう」
沙条「わかりました……」
バゼット「綾香」
沙条「はい……」
バゼット「同じ女として応援しています」
沙条「は、はい!」
バゼット「見事、相手を自分の物にしてみせてください」
沙条「や、やってみます」
バゼット「では」
沙条「……」
沙条「あ、当たって砕けろじゃなくて……当てて砕け……か……」
―――廊下
慎二「えみやー、一緒に帰ろうぜ」
士郎「なんだよ、珍しいな」
慎二「お前に食わせたいものがあるんだよ」
士郎「なんだ。桜の手料理なら正直、家で何度も食べてるぞ?」
慎二「はっ!だれがあんな奴の料理を薦めるんだよ。桜の料理を推すぐらいなら、コンビニ弁当をご馳走してやるよ」
士郎「それ、桜にいったら傷つくぞ?」
慎二「それ、桜の心じゃなくて、僕がだろ?」
士郎「そうだ」
慎二「衛宮、今の発言は内緒だからな」
士郎「はいはい」
沙条「―――あの!」
士郎「え?」
慎二「なんだ?」
沙条「お、お話が……あります……!」
沙条「間桐さん……」
慎二「なに?僕?」
沙条「えっと……」
慎二「あー、そういうことか。駄目駄目。君はすこしレベルが低い」
士郎「慎二!!言いかたがあるだろ!!」
慎二「うるさいなぁ。衛宮はモテナイからそういえるんだよ」
沙条「……」グッ
慎二「だから、申し訳ないけど―――」
沙条「私と……付き合ってください!!!」ドゴォ
慎二「ぐふぅ!!!」
士郎「!?」
沙条「付き合ってくれるまで……殴るのやめません!!」ドゴォバキィドガァ
慎二「ぐはっ!!やめ―――えみ、や!!たすけてぇ!!!」
沙条「付き合ってください!!お願いします!!」
慎二「わ、わかった!!言うとおりにするからぁ!!もうやめてくれぇ!!」
士郎「慎二……」
沙条「うれしい……」
慎二「……」
沙条「さ、いきましょう?」
慎二「いや……僕は……」
沙条「……」グッ
慎二「うん……行こうか」
沙条「はい……」
沙条(先生……うまくいきました……)
士郎「あいつ、変なやつに好かれるんだな……」
バゼット「おや、衛宮士郎」
士郎「よ」
バゼット「む……どうやら、綾香はうまくやったようですね」
士郎「え?」
バゼット「これで生徒をうまく導けました。教師という職業、私に向いているかもしれません」
―――通学路
士郎「じゃあ、あれ、バゼットが教えたのか!?」
バゼット「はい。ついでにルーンによって身体強化も施しておきました。意中の相手は綾香に逆らうことはできないでしょう」
士郎「はぁ……問題にならなきゃいいけど……」
バゼット「心配いりません。綾香は強いですから」
士郎「……」
バゼット「ふふ……」
士郎「どうした?」
バゼット「いえ。嬉しくて」
士郎「嬉しい?何がだ?」
バゼット「労働が愛しく思えました」
士郎「そうか」
バゼット「あと、衛宮士郎?」
士郎「ん?」
バゼット「そろそろ貴方の屋敷から出ようと思います。もう仕事も安定してきましたし、次は自分の根城を見つけます」
―――休日 街
ランサー「バゼット」
バゼット「遅いですよ」
ランサー「いきなり呼び出すからだろうが」
バゼット「では、行きましょう」
ランサー「どこへだ?」
バゼット「住居探しに決まっています」
ランサー「そ、そうか」
バゼット「魔術師という身分を隠せる職も手に入れましたし、これで正々堂々と貴方を養えます」
ランサー「あのよぉ……別に養ってもらう必要は……」
バゼット「そうはいきません。いつまでもカレンのところにいるつもりですか?」
ランサー「そうは思わないけどよ」
バゼット「ほら、行きましょう!」
ランサー「はいはい……」
―――数日後 学校
女生徒「ねえねえ、バゼット先生に恋の相談したら100%付き合えるって噂しってる?」
女生徒「知ってる」
蒔寺「―――そうなのか?」
氷室「最近、その噂で持ちきりだな」
三枝「沙条さんが付き合っちゃったもんね」
蒔寺「確かに。あの間桐を尻に敷いてるもんな」
氷室「ふむ……どんな魔術が……?」
美綴「だってさ」
凛「なによ?」
美綴「いや。あんたは訊かなくていいのかなぁって」
凛「必要ないわ」
美綴「そうかなぁ……?」
凛「……」
―――廊下
女生徒「わかりました!!」
バゼット「がんばってください」
凛「いた……」
桜「いました……」
凛「桜!?」
桜「姉さん?!」
凛「ど、どうしたの?」
桜「ね、ねえさんこそ……」
バゼット「―――なにか?」
凛「うわぁ!!」
桜「きゃぁ!!」
バゼット「なんですか?」
凛「えっと……その……」
バゼット「まさか、貴方たちまで恋の相談ですか?全く、最近は本当にそればかりで困ります」
―――空き教室
凛「屈服させるって……」
桜「……」
バゼット「恋愛とはそういうものでしょう?」
凛「いやいや」
桜「なるほど……」
凛「さくらぁ!?」
バゼット「まぁ、衛宮士郎が貴方たちの脅し程度で折れるかと言われれば首を傾げたくなりますが」
凛「そ、そうよね」
桜「では……どうすれば?」
バゼット「圧倒的な熱量をもってしても、打ち崩せないのなら現時点では攻略などできないでしょう」
凛「……」
桜「……」
バゼット「諦める必要はありませんが、時期を待つべきです」
桜「あの……」
バゼット「なんでしょうか?」
桜「バゼットさんはそれを実践して成功とかしたんですか?」
バゼット「……」
凛「そうよね。成功もしてない策を他人に伝授するなんてことありえないわよね?」
バゼット「ですから、相手との力量の差があると成功は……」
凛「バゼットほどの力があるならそれこそ百戦錬磨でしょう?戦闘も恋愛もね」
バゼット「……」
凛「どうなの?」
桜「体験談をききたいです……」
バゼット「それは……あの……」
凛「……」
バゼット「……これから試してみます」
凛「そう。じゃあ、いい結果が聞けるのを楽しみにしているわ」
バゼット(ランサー……)グッ
―――夜 街
ランサー「バゼットぉ」
バゼット「あ……」
ランサー「なんだ?大事な話って」
バゼット「あの……その……」
ランサー「ん?家の話か?あれはまだ―――」
バゼット「い、いえ……そうではありません」
ランサー「じゃあ、なんだ?」
バゼット「……」モジモジ
ランサー「なんだよ?もしかして……ははーん……よし、いいぜ?」
バゼット「え?」
ランサー「明日は仕事、休みだしな。朝まで俺の上で舞ってくれよ」
バゼット「な、なにをいっているんですか!!」
ランサー「あれ?違うのか?」
バゼット「違います!!その……言っておきたいことがあるんです……」
ランサー「言っておきたいこと……?」
バゼット「はい……」グッ
ランサー「なんでも言ってくれ。大抵のことにはおどろかねえ」
バゼット「わ、わかりました……では……」ググッ
ランサー「……?」
バゼット「ランサー……私の……」
ランサー「え―――」
バゼット「―――ものになってください!!!!」
バキィィィィ!!!!
ランサー「……」
バゼット「はぁ……はぁ……」
ランサー「お、いおい……なにを……壁にライフル弾並みのパンチをかましてんだよ……」
バゼット「だめ……ですか?」
ランサー「駄目っていうかよぉ……」
バゼット「では……こ、今度は直接……」グッ
ランサー「バゼット……?」
バゼット「はぁぁ……!!」
ランサー「やめろ……!!おい!!お前のパンチは洒落にならねえんだ!!!」
バゼット「ランサー……!!」
ランサー「おい!!きけよ!!」
バゼット「好きです!!!」シュッ!!
ランサー「あぶねえ!!!」
ドゴォォォン!!!
バゼット「……何故、私の想いをよけるのですか?」
ランサー「こええよ!!」
バゼット「そんな……ランサーは……わたしのこと……」ウルウル
ランサー「な……」
バゼット「きらいなんですか……?」ポロポロ
ランサー「嫌いじゃねえね……なに言ってんだ……馬鹿……」
バゼット「ランサー……」グッ
ランサー「ほら、いくぞ。家、探すんだろ?」
バゼット「はい」
ランサー「ったく、そんな愛情表現なんてきいたことねえよ」
バゼット「……すいません」
ランサー「なにがあった?」
バゼット「その……教え子に恋は力でねじ伏せろを教えて……」
ランサー「実体験でも訊かれたか?」
バゼット「それで成功するのかと……言われて……」
ランサー「馬鹿だろ?」
バゼット「失礼ですよ!!」
ランサー「確かに愛は暴力だ。どんな魔術でも宝具でも、愛には勝てねえ」
バゼット「え……?」
ランサー「お前に殴れようと、どうせ俺はお前に惚れてるからな。悲しいけど嫌いにはなれねえんだ」
バゼット「ランサー……それって……」
ランサー「俺はお前の魅力に出会ったときかねじ伏せられてんだよ。だから、殴ろうとすんな」
バゼット「ランサー……」グッ
ランサー「ほら、いくぞ」
バゼット「ランサー……!!」
ランサー「なんだ―――」
バゼット「私も愛してます!!!」ギュゥゥ
ランサー「お、おい……!!抱きつくなよ!!」
バゼット「ランサー……ランサー……」メリメリ
ランサー「ふぐ……!!やめ……!!」
バゼット「これからも……ずっと傍にいてください……!!」メリメリ
ランサー「いる……!!いて、やる……だから……!!」
バゼット「すきです……ランサー……大好き……」メリメリ
ランサー「あ……それいじょう……は……!!」
バゼット「ランサー!!」ボキィィ
ランサー「ぁ―――」
バゼット「あれ?ランサー?どうしました?ランサー?」
―――数週間後 学校
沙条「先生!」
バゼット「どうしました?」
沙条「いえ、見かけたので」
バゼット「そういえば、あれからうまくいっているのですか?」
沙条「はい!」
慎二「さ、沙条様……」
沙条「あ、慎二」
慎二「今日のお昼は……どこで?」
沙条「いつもの教室で待っていてください」
慎二「わ、わかりました……」
バゼット「ふふ……いい感じですね」
沙条「先生も、その薬指の指輪、似合ってますよ?」
バゼット「もう、先生をからかわないでください!」
沙条「先生も幸せそうで私も嬉しいです」
―――放課後 校門
バゼット「……」
ランサー「待ったか?」
バゼット「あ、いえ……」
ランサー「んじゃ、帰ろうぜ」
バゼット「……ランサー?」
ランサー「なんだ?」
バゼット「……いえ」
ランサー「大丈夫だよ」
バゼット「え?」
ランサー「これが夢でも……今は幸せだろ?」
バゼット「いつかは……覚めてしまうのですか?」
ランサー「さあな……でも、これだけはいえる」
バゼット「……?」
ランサー「お前への愛情は冷めることはない、ってな」
バゼット「もうばかぁ!!」ドゴォ
ランサー「ほごぉ!??」
バゼット「さ、行きましょう」
ランサー「あ、ああ……そうだな……」
バゼット「幸せです……ランサー……」
ランサー「はいはい……」
―――衛宮邸 庭
桜「先輩!!好きです!!!」ゴォォォ
凛「士郎!大好き!!」バキュンバキュン
イリヤ「シロウ!!だーいすき!!バーサーカー!!私の愛を表現して!!」
バーサーカー「■■■―――!!!!」ドォォォン
セイバー「シロウ……私の愛をこの剣に乗せて届けます……!!エクスカリバァァァ!!!!」
士郎「バゼットぉぉぉ!!!!なんでさぁぁぁぁ!!!!!」
おしまい。
これは良作
士郎死ぬな
士郎がまた苦労するのか
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