実家で暇なので、突発で始めます。
ウルクにカルデア大使館ができてから十数日、ウルクでの暮らしも慣れてきたころ
-北壁のさらに北-
ロマニ『北壁の外の調査?』
マシュ「はい、今朝ギルガメッシュ王直々に依頼されまして。なんでも原因不明な魔獣たちの死体が確認されたとか」
マーリン「場所は兵士やサーヴァントたちの移動ルートからも離れており、ウルクに属するものの手ではないと見ていいらしい。もしかしたら別の脅威が発生した可能性もあるので至急調査せよとのお達しだ」
ロマニ『なるほど、三女神以外の脅威が発生した可能性か・・・それはウルクにとって、確かに死活問題だね』
藤丸「とはいえ朝一番に呼び出されたので若干眠気が・・・ちゃんとした睡眠は乙女にとって大事なことなのに」
ロマニ『あはは、それは災難だったね。まあギルガメッシュ王のポイント稼ぎは今後のためにも必要だから頑張ってね!』
マシュ「大丈夫です先輩、先輩はすごく綺麗なお肌をしていますよ!・・・おや、先行していたアナさんが戻ってきましたね」
アナ「もうちょっと行った先に魔獣たちの死体の山がありました。あれで間違いないかと」
マーリン「ご苦労、アナ。ではカルデアの諸君、死体の検分と行こうではないか」
ついたのは見渡す限り死体がある、という凄惨な丘だった。いくら見たことのある死体とはいえ、ここまでの規模には若干の吐き気もしてくる。当然、死臭も凄かったのだが・・・
マシュ「凄いですね、マーリンさんの魔術で死臭も無くなり、虫さんたちも居なくなりました!」
マーリン「私は花の魔術師だからね、こういったこともお手の物さ」
藤丸「だからって死体からフローラルな香りがしてくるのは頭バグるなあ・・・」
マーリン「花の魔術師だからね。数十日身体を洗えなかった人から爽やかなラベンダーの香りを出すことだって可能だとも」
ロマニ『うーむ、ほかのキャスターや魔術師が聞いたら頭を抱えそうな魔術だなあ』
そんな雑談をしながらも周囲を確認する。しかし、生きた魔獣たちの姿はない。
アナ「これだけの死体のせいか魔獣たちが寄ってこないのは助かりますね」
マシュ「やはり彼らにも、本能的な恐怖はあるのでしょうか」
マーリン「いや、それはない。彼らは『現人類を[ピーーー]ため』だけに創られた存在だ。おそらく無駄に数を減らすことを嫌っているのだろう」
藤丸「数が減ればそれだけ殺せない、から・・・」
マーリン「そういうこと。いやしかし凄まじい傷だなあこれ」
マーリンが足元の死体を杖で突っついた。そんな使い方していいの?
マシュ「傷は鋭利な刃物によるもの、いわゆる切創ですが・・・」
マーリン「頭部と胴体が分かれているならまだいいが、左と右の半身が分かれているものもあるとはね」
アナ「こっちはウガルの死体ですね。心臓を一突きですが」
ロマニ『ウガルって言えば、ウリディンムの上位個体、キメラすら上回る体躯の魔獣じゃないか!それが一撃で!?』
マシュ「はい、それ以外に死因になるような傷はありませんね。一体何と戦ったのでしょう・・・」
マーリン「ふむ、ここまでの戦闘能力で、生身の人間ということは無いだろう。ではサーヴァントと仮定してみよう。我々がこの特異点で存在を確認しているサーヴァントは?」
藤丸「まず、ここにいるマシュ、アナ、マーリン。次にギルガメッシュの配下の牛若、弁慶、レオニダス。あとはイシュタルにエルキドゥ・・・?」
マシュ「はい、私たちが見たサーヴァントはそれで全員かと」
マーリン「あとは三女神の残り二柱に、ギルガメッシュ王が呼んだもう一人だ」
マーリンは地面に〇を3つ描いた。私たち、ウルク、三女神同盟、らしい。
ところでその杖そうやって使って本当にいいの?
マーリン「まず当然、ここにいる私たちは違う。ギルガメッシュ王の話からして牛若丸たちもね。あとの一人も素手で戦うタイプだから違うだろう」
地面に描いた〇のうち、二つに×をつける。
アナ「では、残りの一つ、三女神だと?」
マーリン「いやいや何を言ってるんだいアナ。魔獣の女神とその子供を名乗るエルキドゥには理由がないし、密林の女神は距離が離れすぎている。そしてイシュタルにはこんな切り傷は作れない」
最後の〇にも×を書き足すマーリン
アナ「・・・」
マーリン「無言で鎌を振り上げないでくれないかい!」
マシュ「確かにマーリンさんのおっしゃる通りですが、これでは犯人は分からないのでは?」
マーリン「何を言っているマシュ嬢、これで『私たちが知っているものに犯人がいない』ことが分かったじゃないか」
マシュ「えっ?」
ロマニ『なるほど、つまりまだ存在を知らないサーヴァントが居ると、マーリンはそう言いたいんだね』
マーリン「ドクターロマン、せっかくのセリフを取らないでくれ!」
藤丸「つまり、ほかのはぐれサーヴァント?」
マーリン「もとから居たか、あるいは最近召喚されたかはわからないけどね」
マシュ「となると、この傷からするとセイバーかランサーの方でしょうか」
アナ「っ!周りを見てください!」
緊張感を孕んだ声。見渡すと、いつの間にか魔獣たちが集まってきていた。
藤丸「ドクター!?モニターしてたんじゃ!」
ロマニ『すまない!ついマーリンの話に夢中になってしまった!』
マシュ「ですが、何故今になって集まってきて・・・」
マーリン「ふむ、さっきは知った風な口をきいていたが、よくよく考えれば、無尽蔵に増やせる魔獣に個体を減らさないという意識を持たせる必要はないな」
藤丸「つまり、どゆこと?」
マーリン「彼らがここに居なかったのは、もっと単純な理由からだ」
マーリンがコツ、と一つ杖を鳴らした。そしてマシュとアナが仄かに光る。
マーリン「ここら一体の魔獣が狩りつくされていたのだろう。つまり彼らは、補充されたものというわけだ」
襲い掛かってきた魔獣たちを倒し、急いで北壁まで戻ろうと踵を返す。
ロマニ『待った!そっちの進路にも魔獣たちの反応だ!』
藤丸「後ろにも!?」
マーリン「どうやらここらの魔獣が全滅したことで、今まで以上に魔獣が投入されたらしい。いやーまずいなあこれ」
アナ「藤丸、ここはマーリンを囮にして逃げましょう」
アナは本気でマーリンを置き去りにしようとしてる。
マーリン「いや私が死ぬと本当にまずいから守ってくれたまえ!」
マシュ「しかし、このままでは北壁まで戻るのは不可能です。どうにかしないと・・・!」
ロマニ『今ルートを探してる、もう少し耐えて・・・サーヴァント反応?』
ドクターの言葉が終わる前に、それは現れた。
どこからともなく現れ、周囲に現れていた魔獣たちを切り刻んでいく。
マシュ「未確認のサーヴァントです、マスター!」
マシュの言葉に応えようと口を開くが、それを咆哮がかき消した。
バシュム「■■■■■■■ーーーー!!!!」
マーリン「あれは毒竜バシュム!ウガルに匹敵する大物であり、それ以上に厄介な奴だ!」
マシュ「!マスター、私たちも加勢して」
ザシュっという音が響いた。
そしてバシュムの首がずれ、ゴトリ、と落ちた。
アナ「マーリン?」
マーリン「嘘は言ってないんだがなあ・・・」
バシュムが動かなくなったことを確認すると、その人はこちらに歩いてきた。
白い服に褐色の肌、そして特徴的な、三色の光を放つ剣。
マシュ「先輩、彼女は・・・」
藤丸「うん、ローマで会った人だね」
会話ができる距離まで来た彼女は、声をかけてきた。
アルテラ「私はアルテラ。フンヌの大王、破壊の大王である」
藤丸「危ないところを助けてくれてありがとう、アルテラ」
アルテラ「馴れ馴れしいぞ、人間」
礼を言いながら近づいたら怒られた。つらみ。
ロマニ『いやいや、確かに今のは礼を欠いたものだ。助けてくれた相手ならなおさらね。英霊アルテラ、カルデアの所長代理として、謝辞と謝罪をさせてほしい』
アルテラ「・・・今のは通信の音声か。口八丁で人を丸め込みそのまま逃げそうな、軽薄な声だ」
ロマニ『・・・・・・なんでこうもサーヴァントに嫌われるんだろう、僕』
マシュ「ドクターは本当に、サーヴァントの方々と相性が悪いですね・・・お祓いなどした方がいいのでは?」
ロマニ『何か憑いてるのかなあ・・・この仕事が終わったら考えてみるよ』
藤丸「改めて、ありがとうございます。これでよろしいでしょうか?」
アルテラ「うん、私は大王だからな。それでいい」
何とかOKをもらったところで、第二特異点での出来事を覚えているか聞いてみた。
結論から言えば、覚えてなかった。
第五特異点で会ったネロ陛下が私たちのことを覚えてなかったようなものか。エリちゃんは覚えてたけどどういう基準・・・?
マーリン「ふむ、さっき私たちが確認していた死体も君の仕業とみていいのかな?」
アルテラ「ああ、先日ここで召喚されたときに襲い掛かってきたので切り伏せたのだ」
マーリン「先日、ということはここ数日のことか。君ははぐれサーヴァントなのかな」
アルテラ「3日ほど前だ。そしてはぐれサーヴァントであっている」
マーリン「なるほどなるほど。立ち話もなんだ、少し歩くが、我々の拠点としている街がある。そこに行こうと思うのだが、どうかな?」
心なしか、マーリンがナンパをしているような感じになっている・・・が、「交渉は任せたまえ」と耳打ちされたのでとりあえず任せてみよう。
あとアナが苦虫を嚙み潰したような顔になっていることはスルーした方がよさそうだ。
-ウルク・ジグラット-
ギルガメッシュ「なるほど、それでこの英霊アルテラを連れてきたわけか」
マーリン「その通りだ。彼女に協力してもらえるならウルクの守りも再び堅く出来ると思うんだがね」
マーリンがあの手この手を使い、ジグラットまでアルテラを連れてくることに成功した。
アルテラはギルガメッシュを、ギルガメッシュはアルテラを、目をそらすことなく毅然と見ている。
アルテラ「自己紹介は要らぬようだな、英雄王」
ギルガメッシュ「ほう、我に対してそのような口を利くか」
マシュ(先輩、ギルガメッシュ王の顔は笑ってますが、なんだか雰囲気が・・・)
藤丸(うん、私たちが力試しされた時より空気が重い・・・)
短い時間ではあったが、そこには沈黙が生まれた。シドゥリさんやマーリンすらもその口を閉ざすほどの重さを持って。
ギルガメッシュ「・・・フン、このようなことに時間を費やしている余裕などない。下がるがよい」
藤丸「いやいやギルガメッシュ王!?アルテラさんをどうする、とか無いんですか!?」
ギルガメッシュ「知らん、このウルクに危害を加えるなら相応の対応はするが、特にその気が無いならあとは好きにしろ」
アルテラ「・・・そう、だな。この都市を破壊する気はない、好きにさせてもらおう」
言うや否やさっとジグラットを出ていくアルテラを、慌てて追いかけた。
-ウルク・市街地-
マシュ「アルテラさん、これからどうするつもりなのでしょうか」
アナ「都市を破壊する気はないと言ってましたが、ここに留まるのか、それとも出ていくのか。どちらでもいいですが」
藤丸「あの、アルテラさん」
アルテラ「なんだ、藤丸」
藤丸「もし行く当てが無いならですけど、カルデア大使館に来ませんか?」
マシュ「!いいですね!アルテラさんが来るならおもてなしをさせていただきます!」
アルテラ「カルデア大使館?」
マシュ「はい、私たちがここウルクでギルガメッシュ王に与えられた拠点です!場所もそう離れてないので休んでいただくのにもいいかと」
アルテラ「・・・わかった、いいだろう。案内しろ」
そうして、私たちはアルテラさんを連れて大使館に戻った。どこから聞きつけたのか牛若丸たちも合流し、以前と同じような宴会騒ぎがあったりもした。
そして次の日、起きると
アルテラ「すまない藤丸、私は英雄王の元で動くことになった」
こんなことを言われた。
-ウルク・カルデア大使館-
藤丸「アルテラがギルガメッシュ王の元で動く・・・?一体どうして」
アルテラ「昨晩、お前たちが寝た後に奴に呼び出されてな、そうしろと言われた。断る理由もなかったので受けた」
藤丸「そっか・・・」
正直なところ、アルテラとの親睦をもっと深めたかったが、アルテラ自身が決めた以上仕方ない。
藤丸「で、アルテラはこれからどうするの?」
アルテラ「牛若丸たちと似たようなものだ。前線で魔獣たちの戦力を削ぐ。だからお前たちと会うこともそうそう無くなるだろう」
藤丸「・・・もっと話とかしたかったなぁ」
アルテラ「そう、だな。また機会があれば話すのも悪くないかもしれない。マシュにもよろしく伝えておいてくれ」
そう言うと、アルテラは大使館を後にした。
そして時間は過ぎていく。ゴルゴーンが姿を現し、レオニダス王が決死の一撃を当て、牛若丸が消え、弁慶もいなくなった。
イシュタルを競り落とし、ジャガーマンとケツァルコアトルを味方につけ、冥界へ降りてギルガメッシュ王を呼び戻した。
この間、アルテラとは運悪く会うことは出来なかった。特に三人がいなくなったあとはその噂すら聞かなくなるほどに。
そして鮮血神殿での決戦でゴルゴ-ンを打倒し、真のティアマト神が目覚め・・・
-ウルク・市街地-
ラフム「iy:@yq@!iy:@yq@!glx:!glx:!」
市民「逃げろー!早くジグラットへ!」
兵士「怯むな!レオニダスさんの教えを思い出すんだ!」
ラフム「qkdeqkde!6md\e!」
イシュタル「何なのよこれ!」
マシュ「マスター!あそこに逃げ遅れた人が!」
藤丸「だめ、あそこまで行けない!」
マシュの指し示した場所にはすでにあの謎の生物たちが向かっていた。確実に、間に合わない・・・!
ラフム「b\pb\pb\rkf6md
アルテラ「破壊する」
その生物たちは一瞬で二分にされた。あの時の魔獣のように。
マシュ「アルテラさん!無事だったんですね!」
アルテラ「話は後だ、市民の逃げる時間を稼ぐぞ」
藤丸「うんっ!」
イシュタル「何なの、あいつ・・・?」
上空からラフムを打ち抜いていたイシュタルは、それになぜか嫌悪と恐怖を覚えていた。
-エリドゥ-
ケツァルコアトル「・・・」
イシュタル「・・・」
ジャガーマン「・・・?」
ケツァルコアトルと合流し、シドゥリさんが居なくったことを受け、急いでエリドゥまで移動してきた。
しかし何故か、女神たちがアルテラをいぶかしんでいる。
マシュ「あの、何か・・・?」
アルテラ「・・・気にしないでいい。それより喧騒が聞こえる、急げ」
ラフム「!」
ロマニ『まずい、ラフムに気づかれた!とはいえ一体だけだ、仲間を呼ばれる前に倒すんだ!』
決着はすぐについた。ケツァルコアトルが渾身の力で蹴り飛ばしたそれは、手を振るような動作をする。
藤丸「!!!」
マシュ「っ!」
イシュタル「・・・」
ロマニ『はやく止めを!仲間を呼ばれる前に!』
ケツァルコアトル「まかせて!」
藤丸「待って!」
咄嗟に叫んだ言葉にサーヴァントたちは動きを止める。いや、マシュとイシュタルだけはもう動いてなかった。
アルテラ「どうした」
イシュタル「あいつはほおっておいていいわ、早く中に向かいましょう」
あのラフムはよろよろと動き、密林の中へと消えた。
そしてエリドゥの街で見たのは、地獄だった。
人と人が見世物で殺しあう。そしてラフムに殺される。
女神たちと破壊の大王がそこに割って入るも、戦いは五分と五分。
そして激昂したキングゥが来るが、隙をつかれて、体内にあった聖杯をラフムたちに奪われてしまう。
羽を生やし、ティアマトへ聖杯を届けるラフムを止めるため、藤丸、マシュ、イシュタルは汚染された海へと向かった。
-原初の海-
羽を打ち抜き、何とか飛行能力を削ぐも、泥の中から出てきた黒化した牛若丸に妨害されてしまった。
黒化牛若丸「行かせんぞ!」
藤丸「牛若、どうして!」
イシュタル「あんたら知り合い?けど手加減する意味なんてないわ。無限に増えるならまとめて消し飛ばすだけよ!山脈震撼す―」
マシュ「っ!イシュタルさん!!」
マシュがイシュタルの正面に跳び、放たれた矢を弾く。
マシュ「グッ、重い!」
イシュタル「矢ですって!?」
牛若丸は、ケラケラと笑い、そして言葉を紡いだ。
牛若丸「ああ、そういえば、彼女を紹介していませんでしたね。これは失礼。彼女は巴御前。あのギルガメッシュが召喚したサーヴァントの一人です」
巴「・・・」
泥の海に立つ、シャドウサーヴァントらしき影は無言で弓に矢をかけた。
マシュ「巴御前、確か彼女は魔獣たちの将軍ギルタブリルと相打ちになったと・・・」
牛若丸「ええ。ですが、その霊基は消える前に、魔獣たちが回収していたのですよ。そして私と同じように、ケイオスタイドに入れられた」
巴「■■■■」
巴御前の影が矢を放つ。それは寸分違わずに私の眉間と心臓を狙って来て、マシュが盾で受けてくれた。
牛若丸「おっと失礼、私と違って彼女の意識は無いに等しく、待つということができませんもので」
マシュ「先輩、あの巴御前さん、ただのシャドウサーヴァントでは無いようです!」
ロマニ『こっちでも観測した!確かにシャドウサーヴァントのようだが、その出力は桁違いだ!神霊サーヴァントに匹敵するぞ!』
牛若丸「それだけ母上の権能が強いということだ。そしてたった今、聖杯は母上に届けられた」
牛若丸の言葉に呼応するように、海から無数のラフムたちが浮かび上がってくる。
牛若丸「ではこの傷ついた身体は破棄しましょう。藤丸殿、マシュ殿、次に会うことがあれば、それがお二人の最後です。尤も、その機会も無いでしょうが」
そう言って、牛若丸は消えた。そしてついて行くように、巴御前も泥の中へ沈んでいった。
その後、観測所でのわずかな休憩と作戦会議。ティアマトの頭脳体へのイシュタルの全力での宝具攻撃を行うも、ティアマトが完全に目覚めるだけで終わった。
そしてウルクは、ギルガメッシュの用意していたナピュシテムの牙を用いることで何とか泥の波を押しとどめ守られるも、すでにウルク第一王朝の崩壊は確定。
なんとかティアマトに対抗する手段はないかと改めて作戦会議が行われ、「子である生命がいる限り死なないティアマト」を倒すために、「生者のいない冥界にティアマトを落とす」作戦を取ることに。
そしてそのためには3日間の猶予が欲しいとエレシュキガルは言う。
ティアマトがウルクに到達するまで、ジャガーマンの見立てで2日。1日なんとか押しとどめるため、イシュタルのグガランナを使うという案が出されるが・・・
ギルガメッシュ「このたわけがぁ!!」
イシュタル「うえーーーーん!!!」
なくした、らしい。なんなら私たちがこの特異点に来たタイミングで既になかったとか。
皆沈黙してしまったところで、ギルガメッシュ王は一度解散して夜明けまで休むことを提案し、解散となった。
私が大使館で南米二人組と話していた頃。
-ウルク・壁上-
イシュタル「おやすみ。明日も早いんだから休みなさいよ」
マシュ「はい、おやすみなさい。イシュタルさん」
アルテラ「・・・行ったか」
マシュ「アルテラさん、いつの間に!?」
アルテラ「先ほどだ。とはいえ女神が気付かないはずがない。これは順番を譲られたか」
マシュ「アルテラさんも、私とお話を?」
アルテラ「ああ。マシュは、元々世界と触れずに育ってきたと聞いてな。そんなお前に尋ねたいことがある」
マシュ「はい、私で答えられることであれば」
アルテラ「マシュ、お前はこの世界をどう思う?今まで世界を知らなかった者が、世界に初めて触れてどう感じた?」
マシュ「・・・そうですね。一言で言い表すのは無理です。
私が触れたのは、おそらく一般的な人よりも少ない世界です。
・・・でも、それでも。
この世界、この特異点だけでなく、この地球という世界は素晴らしいものだと思います。
人が懸命に生きて、次に繋げてきたこの世界、この人理は、かけがえのないものです」
アルテラ「・・・そうか、そうだな」
アルテラ「私は文明の破壊者だ。私には破壊しかない・・・それでも、私は破壊を、したくない」
マシュ「・・・」
アルテラ「この世界に召喚され、この世界の文明に触れてきた。人は笑い、力の限り生きていた。私は、彼らが生きて繋げたものを護りたい」
マシュ「アルテラさん・・・!」
アルテラ「すまない、長く引き留めてしまった。あの女神も言っていたが、明日は最初の決戦になるだろう。十分に休むがいい」
マシュ「はい、ありがとうございます!」
アルテラ「月が雲に隠れてしまいそうだ、明るいうちに移動しろ」
マシュ「わかりました、おやすみなさい」
アルテラ「・・・・・・」
-ウルク・ジグラット-
その後の解析で、ティアマトはケイオスタイドの上しか移動できないのではという仮説が立てられる。
ティアマトの移動速度が予想以上に速いこともあり、臨時の対処としてケツァルコアトルが宝具でケイオスタイドを蒸発させることを提案した。
アルテラ「いや、その必要は無い」
マシュ「え?」
アルテラ「カルデアの魔術師、確認だが、特異点で起きたことは、特異点を修復できれば『なかったこと』にできるのだな?」
ロマニ『うん、それは間違いない。けど、どうして急に・・・』
アルテラ「私に策がある」
ギルガメッシュ「・・・いいのだな?」
アルテラ「ああ」
イシュタル「ちょっとちょっと、何二人で分かりあってるのよ、ちゃんと説明しなさい!」
ギルガメッシュ「説明しても貴様らでは分らんだろう」
イシュタル「何ですって!!」
ケツァルコアトル「確かに、ちょっと不親切ではなくて?少なくとも何をするのかを教えて」
アルテラ「ティアマト神を止める」
イシュタル「で、なんであいつは一人牙の手前まで行ってるわけ?」
マシュ「アルテラさんの霊基では、ティアマト神を止められるだけの出力は出せないはずですが・・・」
ジャガーマン「うーむ、ジャガー的野生の感でもそういってるにゃ」
ギルガメッシュ「たわけ、少しは静かにしろ」
アルテラ「・・・マルスよ、私を憎むことも分かる。私にその資格がないことも知っている。しかし、それでも、一度でいいから力を貸してほしい」
アルテラ「・・・」
アルテラ「軍神の剣よ、繋げ、届かせろ!」
アルテラの持つ三色の剣、そこから、一筋の赤い光が、天へと伸びていった。
-■■■・■■■■-
…
…
不明なデバイスからの接続を確認
接続元を確認中…
コードを確認、接続元を子機と断定
未知の情報を検知
情報の回収、解析を行います
解析完了
解析結果より、本機の再構築を行います
…
再構築が完了
■■■■■、再起動を行います
-ウルク・ジグラット-
イシュタル「ちょっと、あれからあいつ全然動かないじゃないのよ!」
マシュ「既に30分が経過・・・これ以上は」
ケツァルコアトル「もう、今からでも遅くないわ!ケツァルコアトルスでティアマトの元まで」
ロマニ『待った!なんだこの計測数値!?何が起きた!?』
藤丸「ドクター?」
ロマニ『この数値はどこから?上空、いやこの高度は、宇宙空間!?』
マシュ「あの、ドクター!いったい何が?」
ロマニ『立香ちゃん、急いで地下に避難だ!ウルク上空に隕石を確認した!』
イシュタル「・・・はあ!?」
ケツァルコアトル「!こっちでも見えたわ!あれね」
ケツァルコアトルの指さす先には、確かに炎を纏う巨石があった、その下にあるのはティアマト神
マシュ「もしかして、アルテラさんがやったのでしょうか?」
ロマニ『いや、アッティラ・ザ・フンに隕石にまつわる話なんて存在しない!とにかく安全な場所へ』
ギルガメッシュ「おちつけ、何もせんでいい」
マシュ「ギルガメッシュ王!?」
イシュタル「馬鹿言ってんじゃないわよ!あんな規模のもの落ちてきたら私たちだって無事じゃあ」
ジャガーマン「いや、待つにゃ!隕石から何か出てきた!」
ジャガーマンの言葉に目を細め、よく見てみると、人型のものが隕石の中から出てくるのが見えた。
マシュ「まさか、宇宙人でしょうか!?これは世紀の大発見なのでは!?」
藤丸「そうだとしてもまず人類が焼却されてるから意味ないねぇ!」
その宇宙人(仮)は近くの台地に着地した。
隕石はそのままティアマトに直撃したが、ティアマトは無傷。
衝撃波こそ飛んできたが、何故がただの暴風であり、牙もジグラットも大きな被害は受けなかった。
・・・なんで着地したのが見えるの?
マシュ「あの、ドクター。あの宇宙人は確認できてますか?」
ロマニ『ああ、こちらでも補足しているが・・・なんなんだあれ』
それは、白い服を着た褐色の巨人。
本来なら自重で潰れるはずの、物理学を完全に無視したものは、跳躍し、牙の中に入ってきた。
その姿は、アルテラと瓜二つで―
足元のアルテラと何か話しているようだ。そしてこちらをちらと見てから、同じくらいの大きさのティアマトを見据え、
巨人「ああああああああ――――――!!!!!」
巨人の咆哮が、いや悲痛が轟く。そして巨人は光に包まれ・・・
巨人「■■■■■■■■■■■■――――――!!!!!」
褐色だったそれは、全身が青白いモノへと変貌をした。
イシュタル「!!!!」
ケツァルコアトル「!!!!」
ジャガーマン「!!!!」
藤丸「みんな!?」
マシュ「皆さん、倒れ込んでどうしました!?」
ケツァルコアトル「あれはマズい、あれはマズい!!」
ジャガーマン「ククるんに同意!ジャガーもそうだそうだと言ってます!!!!!」
イシュタル「母さんよりもヤバいわ、何なのよこの悪寒、あれは何なの!!!」
ギルガメッシュ「この中にイシュタルの言葉に応えられるものはいるか?」
誰も手を上げない。ドクターも無言だ。女神たちは縮こまり震えるのみ。
ギルガメッシュ「では我が教えてやろう。あれこそは一万年前、この星の人類と神々と文明の殆どを破壊した存在、セファールよ」
アルテラがウルクに来た日の夜
-ウルク・ジグラット-
ギルガメッシュ「・・・来たか」
アルテラ「呼び出して何の用だ」
ギルガメッシュ「フン、雑種であればほおっておいてもよかったのだがな。雑種もどきとくれば話は変わる」
アルテラ「雑種もどき・・・貴様はいつも私をそう呼ぶのだな」
ギルガメッシュ(ほう、俺と会ったことがあるか。今は千里眼が使い物にならんから見えぬが)
アルテラ「貴様であれば私の正体も分っていよう。それでどうする」
ギルガメッシュ「消す、のが確実な手段であろうな。貴様は存在そのものがこの国にとって厄介な存在だ」
アルテラ「・・・」
ギルガメッシュ「だが将来、この国が相対するのは原初の母。であれば使える戦力は全て使わなければならん」
アルテラ「つまり、私を使うつもりか」
ギルガメッシュ「当然であろう。遊星の先兵、文明の破壊者であれば地母神を相手にすることも可能だろうからな」
アルテラ「・・・それで私になんの得がある?私にはここを護ることに意味はない」
ギルガメッシュ「貴様は人理の召喚した、この特異点を正すための存在ではないのか」
アルテラ「それは間違いではない。だが、私にその使命を遂行する義務はないぞ」
ギルガメッシュ「では何故カルデアの者たちについて来た。義務がないならウルクに来ることもせんでよかろう」
アルテラ「・・・」
ギルガメッシュ「そして貴様、一つ嘘を吐いたな。『護ることに意味はない』?たわけめ」
ギルガメッシュ「そう思っている者がそのような眼をするはずがなかろう」
アルテラ「眼・・・?私の眼が、どうした」
ギルガメッシュ「考える者の眼だ。常に目的のために、思考を止めずひたすらに道を探す者の眼だ。貴様、何を護ろうとしている」
アルテラ「・・・」
アルテラ「私は・・・」
ギルガメッシュ「いや、言わなくていい。おそらくこちらには関係ない話であろう」
アルテラ「・・・わかった」
ギルガメッシュ「では改めて聞こう。貴様は我に使われる気はあるか」
アルテラ「いいだろう。お前に新しい借りを作るのも悪くない」
ギルガメッシュ「今何か良くない言葉が聞こえた気がしたが、よかろう、王の寛大さにひれ伏せ」
アルテラ「私は恐怖の大王である。ひれ伏しなどはしない」
ギルガメッシュ「フハハハハハ!言うではないか!」
アルテラ「それで、私はどうすればいい」
ギルガメッシュ「カルデアのは今後、女神どもを仲間に引き入れる。その際にお前がいては障害になりかねん」
アルテラ「どういうことだ?」
ギルガメッシュ「貴様気付いてないのか。わずかではあるが、巨人の気配がしている。あの時代を生きたものや近いものであれば不快感を感じるだろう」
アルテラ「なんだと!?・・・気付いてなかった」
ギルガメッシュ「であれば、時が来るまで女神たちとは接触しない方がいいだろう。ひとまず我のサーヴァントたちと同様の采配を行う」
アルテラ「分かった」
現在
-ウルク・ジグラット-
イシュタル「・・・つまり、あれは一度世界を滅ぼしかけた宇宙兵器って認識でいいのね」
ギルガメッシュ「貴様の頭でそこまで理解できるとはな。認識を改めねばなるまい」
イシュタル「よしわかった歯ァ食いしばりなさい」
ケツァルコアトル「気持ちは分かるけど落ち着きなさい。今はそんなことしてる場合じゃないわ」
ギルガメッシュに殴りかかろうとするイシュタルをケツァルコアトルが止める。
マシュ「あの先輩、何故イシュタルさんは歯を食いしばるように言ったのでしょうか?」
藤丸「うん、マシュは知らなくてもいいから後ろ向いててね」
マシュ「?」
イシュタル「・・・そんなやりとりされちゃこっちも拳を降ろすしかないじゃないのよ」
ロマニ『待ってくれ!いや今の話も非常に気になるが、あのケイオスタイドには触れたものをティアマトの眷属にする効果があるんだぞ!もしセファールが眷属化したら』
アルテラ「その心配はない」
藤丸「アルテラ!?どうして?」
アルテラ「おかしなことを言う、私がここに戻っては変か?」
藤丸「いや、てっきりあの巨人と一緒に戦うものとばかり・・・」
アルテラ「あの姿になっては私も不用意に近づけないのでな。できることも少ないので戻ってきた」
ロマニ『それよりセファールが眷属化する心配がないとはどういうことだい?』
アルテラ「セファールは術式で編まれたものを純粋な魔翌力に変換して吸収する能力がある。ケイオスタイドは言わば、ティアマトの攻撃術式、防御術式と捉えられる。つまり」
ロマニ『!!確認した、確かにセファールの周囲のケイオスタイドが無害化、消滅している!』
アルテラ「そして吸収した魔翌力はそのままセファールの力となる。質量差もあるから、ラフムたちの攻撃程度なら即回復可能だろう」
ティアマト「■■■■■■■■――――――――!!!!」
セファール「■■■■■■■■■■■■■―――――――――!!!!!!!!」
二つの咆哮が重なる。
巨躯と巨躯が重なり、そして互いを排除しようと攻撃をする。
ティアマトの声が、セファールの腕が、目が、口が、敵対するものをかき消そうと動く。
そしてその余波で、周囲のラフムたちが消し飛んでいく。
マシュ「・・・あれ?セファールさんが一回り大きくなったような・・・?」
イシュタル「はあ?いやいやそんなわけ・・・」
ジャガーマン「いやあれ大きくなってるわね」
アルテラ「セファールは一定以上の魔翌力を回収すると体躯を成長させる。ここには重力がある以上、上限があるが」
ロマニ『その口ぶりだと重力がないなら際限なく大きくなれるって感じだな!一万年前、いや僕らの時代からだと一万四千年前か。その時はどうやって倒したんだ!?』
アルテラ「セファールが完全に吸収できるのは技術、術式、文明によるもの。魔術や火器による攻撃では完全に吸収させる」
藤丸「・・・つまり逆に言えば、そういうものでないなら攻撃が通る?」
アルテラ「そうだ。つまり単純な物理攻撃、殴る、蹴る、斬るといったもの。あるいは、星そのものによる攻撃ならば倒すことは可能だ」
ロマニ『星の攻撃・・・星の内海で造られた神造兵器による攻撃か!』
ギルガメッシュ「実際にセファールを打ち倒したのは星の光と聞いた。それがそうであろう」
ケツァルコアトル「ねえ、そもそもなんでセファールはティアマトと戦ってくれてるの?」
ギルガメッシュ「簡単なこと。あれには知性も理性もある、相手の命乞いを聞く程度にはな。そしてアルテラめが説得した。それだけよ」
イシュタル「知性と理性、ねえ・・・そうは見えないけど」
藤丸「そういえば、最初はアルテラと似たような姿だったけど、あの白い姿になったよね」
アルテラ「この私は、セファールの頭脳体が人となって人理に刻まれた存在だ。そしてその情報を月の裏で眠るセファールの本体に送った」
マシュ「月の裏、ですか?ですが今は昼で月は出てません」
アルテラ「この剣に少々無茶をさせた。おそらく本体はその情報を基に、瓦礫などから物理体を再構築したのだろう。そして消えた紋章の最後の一文字を、自らの意思で再び刻んだ」
藤丸「自らの意思でって?」
アルテラ「無理やり刻まれれば、理性のない怪物が生まれてしまうが、自分の手ですればそれは抑えられる」
マシュ「なるほど、だからティアマト神にのみ相手を絞っているのですね!」
-ティアマト神の足元-
ラフム「なんだこいつなんだこいつ!」「母が進めない!」「邪魔だ邪魔だ!」
牛若丸「チッ、カルデアの奴らの仕業か!しかし母上が行けなくとも先に行き皆殺しにするまで。巴、付いてこい!」
巴「」コクリ
弁慶「そうはさせませぬぞ!」
牛若丸「はっ、常陸坊!貴様が来たところでどうにもできまい!あのまま消えれば楽だったものを!」
弁慶「ええ、楽でしたでしょうとも!しかしそれでは弁慶殿たちに詫びても詫びきれぬ!いや既にそうですがなぁ!」
牛若丸「では永遠に詫び続けるがいい!壇ノ浦・八艘跳!」
弁慶「!!」
いくつにも分裂した牛若丸たちが、一斉に弁慶に刃を向ける。さらにはその間を縫うように、巴御前の放った矢が襲い掛かる。
弁慶には牛若丸は切れない。そして巴の矢を防ぐよりも速く、牛若丸たちの刃は弁慶を貫く。
牛若丸「!?」
しかし、武蔵坊弁慶は生きている。そして、刺されたままの状態で跳躍をした。その先は
セファール「■■■■■■■■―――」
牛若丸「なっ常陸坊、貴様諸共死ぬ気か!?」
弁慶「ええ、此度こそは最後までお供いたしますとも!」
牛若丸「馬鹿め、私は本体さえ残れば――」
弁慶「貴方の言う本体はおそらくこの泥の中でしょう。そして巨人はその泥を浄化している。では、巨人にあなたの位置を教えれば?」
牛若丸「!?馬鹿な、そんなことが可能なはず」
弁慶「そもそも、私がなぜここまで来れたのか、それを考えれば分かるでしょう!」
数時間前
-セファール-
弁慶「御免っ!」
何かが肩に乗ってきた。それは小さいが、よく聞こえる大きな声。
弁慶「拙僧は常陸坊海尊と申す、故あって頼みたいことが」
セファール「すぐに離れてください。私は魔翌力を吸収してしまいます。サーヴァントのあなたでは・・・」
弁慶「そなたにしか頼めぬのだ!!我が主を救って下され!」
セファールのことに耳を貸さない。いや、その余裕がないのか。主を救うとは。私は破壊しかできないのに。
とりあえず目の前のティアマトから意識を離さずに、その常陸坊海尊とやらから話を聞く。
・・・
悲しく感じた。辛かく感じた。変質してしまった君主を救うために殺さなくてはいけない。
まだ見ぬ、いやこの世界では見ることのできない私の虜囚なら、多分手を貸す。
ならば私は虜囚のサーヴァントとして、恥じないことをするのみだ。
常陸坊が飛び降りる。着地位置の泥を吸収する。
舞台は整えた。あとは合図を待つのみ。
弁慶「五百羅漢補陀落渡海!」
牛若丸「離せ、離せ常陸坊!」
牛若丸がもがくが、弁慶は決して離さない。そして弁慶の放った宝具は、周囲の泥やラフム、巴すらも巻き込み弁慶たちを移動させる。
弁慶「観えた、巨人殿!!!」
武蔵坊弁慶最後の力、渾身の大声は、確かにセファールの耳に届いた。
セファールが足を振り上げ、そして、牛若丸の本体のいる場所を踏みつけた。
その巨躯に見合う大きさの足は、弁慶や巴をも巻き込み全てを潰し、吸収した。
足の届く刹那、己の俊足を持ってしても逃げられないことを悟った牛若丸は、自嘲気味に、けれども満足そうに笑った。
-ウルク・ジグラット-
マシュ「エレシュキガルさんの予定時刻まで残り10時間です!ティアマト神、セファールさんに押され距離は開く一方です!」
イシュタル「なーんだ、意外と行けるんじゃないの?これならエレシュキガルが冥界を開くまで十分に間に合うでしょ!」
ギルガメッシュ「たわけ、楽観視していると足元を掬われるわ。カルデアの、今のティアマト神の状態は?」
ロマニ『それが恐ろしいほどに変わってない。セファールからの攻撃でダメージは受けてるはずだけど、その効果も見えない』
ジャガーマン「うーむ、それってつまり、ヤバいのでは?」
ケツァルコアトル「同感ね。母さんはまだ余力を残しているはず。それをいつ出してくるのか・・・」
イシュタル「なにをそんなに心配してるのよ。あれはケイオスタイドがある限り無限に回復と強化をしているのよ?」
藤丸「・・・ねえ、マシュ。イシュタルがものすごい勢いでフラグを立て始めたんだけど・・・」
マシュ「フラグ・・・物語におけるジンクスですね。その後の展開を示すものだと認識してます」
アルテラ「英雄王、聞こえたな?」
ギルガメッシュ「うむ、そろそろ動きがありそうよな。心しろ、藤丸立香」
イシュタル「だから大丈夫だって!セファールを倒す手段があるわけ」
ロマニ『ティアマト神の魔翌力反応が増大!?いやこれはティアマト神じゃなく、ティアマト神内部からか!』
直後、ティアマト神の胸から黒い一筋の光が立ち昇る。そしてそれは、セファールを縦に切り裂いた。
光が届く直前、大きく身体を曲げたことで胴体への直撃は免れたが、それでも左腕が切り落とされた。
幸いなのは距離が大きく離れていたことで大きく逸れ、牙含めウルクに光による被害が出なかったことか。
マシュ「っ!先輩、あれは!」
藤丸「うそ、でしょ・・・」
セファールが体勢を崩し、そのまま倒れる。ケイオスタイドで肥大化していたセファールに、今の重量を立て直すことは出来なかった。
そしてあの黒い光。私たちは既に見ている。遠く離れている以上、確認はできないが、あそこにいるサーヴァントは分かる。
進軍を再開したティアマト神、その傍を飛ぶラフムの一体に、黒い甲冑の騎士が乗った。
反転した騎士王。変色した星の聖剣の担い手。その真名をアルトリア・ペンドラゴン・オルタナティブ。
アルトリアオルタ「行きましょう、母上」
ティアマト「■■■■■■■■■■■■■■■■――――――!!!!!!!」
母が歓喜に震える。ついに自身を否定した、古い子らに罰を与えることができる。
一刻も早く、あの都市を、あそこにいるこの特異点の要の王を殺さなければ。
ロマニ『セファール、戦闘不能だ!一気に来るぞ!』
アルテラ「くっ、予想よりも早い・・・!」
ロマニ『まて、なんだこの反応!?』
ギルガメッシュ「どうしたカルデアの!」
ロマニ『そんな、移動速度が上がっただけじゃない、浮いている!』
イシュタル「はあ!?」
ケツァルコアトル「そんな、母さんは地母神よ!?地面から離れられるわけが」
ギルガメッシュ「間違いではないのだな?」
ロマニ『間違いだって言いたいが、間違いじゃない!今のティアマト神は飛行状態だ!』
マシュ「待ってください、それでは、ティアマト神を冥界へ落とせません!」
ジャガーマン「もしエレシュキガルちゃんが間に合ってもダメってことじゃにゃいか!こいつはマジィ!」
ロマニ『ウルクに到達するまでに、どうにか巨大化した角を破壊するしかない!』
ケツァルコアトル「私が破壊に行くわ!みんなは迎撃の準備をして!藤丸、令呪を使ってくれる?」
藤丸「ケツァルコアトル・・・わかった、令呪、使うよ」
アルテラ「いや、私が行こう」
マシュ「アルテラさん!?」
ケツァルコアトル「今は余裕がないわ。確実に角を壊せる者が行くべきよ」
アルテラ「角にばかり目が向いて、あの場に聖剣使いが居ることを忘れてないか?お前はあの聖剣使いを相手にしながら角を破壊できると?」
ケツァルコアトル「貴方にはできるの?」
アルテラ「できる。藤丸、私を飛ばしてくれ」
アルテラの確信を持った目。大丈夫、やってくれる。
藤丸「分かった。令呪をもって命ずる、アルテラ、飛べ!」
-セファール-
身体が重い、腕のあった場所が痛い。
周囲の泥を吸収することでなんとか直してはいるが、それでも十全な復元は不可能と見るべきか。
そんなことを考えていると、人の私が上に乗ってきた。
アルテラ「まだ動けるか、セファール」
セファール「今すぐとなるときついですが、はい、出来ないことはありません」
アルテラ「急いでティアマトの角を破壊してくれ。私が援護する」
立ち上がりながら事情を聞き、理解を示す。
この戦いで勝てなければ、人理は無くなる。人の歴史は、無かったことにされる。
つまり、彼女に与えられた『記録』に出てきたあの人がいるかもしれない世界が、一つ消える。
それは、絶対にダメだ。この世界では、あの人は月には来ないかもしれない。だとしても、あの人がいなくなることに耐えられない。
セファール「■■■■■■■■―――!!!」
雄叫びを上げる。こっちを見ろと、異星の母に叫ぶ。
しかし振り向くことはない。代わりに、彼女のそばから上がる光。
アルテラ「やらせん!」
アルトリア「くっ!」
それをアルテラが留める。振り下ろす前に刃を弾く。
今の彼女は十全ではない。私を喚ぶため、そしてさっき私と話すために魔翌力の大部分を失っている。
それでも一瞬の隙を作ってくれた。彼女もまた、あの人のために。
ならば、応えなければ。
セファール「■■■――――――」
持てるすべての力を使い、ティアマトの角を掴む。
ああ、あなたはそんなにも悲しい声で泣く。悲しい顔でいる。
子供に要らないと言われるのは、生産する力を持たない私では想像もできないほどに悲しいのでしょう。
ですが、この星の母よ。私はあなたの作った、あなたの子供たちが作った文明を、あなたの子供を愛してしまった。
私を美しいと言ってくれた。嫌われるのが怖いほどに、愛していた。一目惚れだった。
私は破壊するもの。私は文明の終末装置。
私は、あなたの作ろうとする新しい文明を、破壊する。
母上の角にヒビが入る。
アルトリア「約束された勝利の剣!」
強引に発動した宝具の光は、一度剣を受け止めたアルテラごと、白い巨人を飲み込む。
軌道に注意し、角に当たらないようにしたが、それ故に最後に残った腕が、亀裂を広げる。
しかし腕だけではそこまで。腕も消滅する。
肝を冷やされたが、なんとか母上を護り通すことができた。
後はあそこの人類を皆殺しにするのみ。
そのはずだった。
あの終末装置を倒したすぐ後、泥の中から新しいモノが出てきた。
最初は巨大なラフムでも創ったのかと思ったが、違った。
それは母上の名を騙った、堕ちた女神の末路の蛇。
こともあろうに母上と対立するらしい。
なんとも馬鹿な存在だ。
母上の手を煩わせる必要もない。巨人と同じく、塵と散れ。
蛇は、宝具を耐えてきた。そして反撃で撃ってきた攻撃。
それは私ではなく、母上の角のヒビを狙ったもの。
すでに脆くなった場所への追撃。耐えられるわけもなく、母上は、角は、落ちた。
・・・だからどうした?
母上は全ての生命の原点に立つ者
角を折られ天上へと上がれなくなったところで、その事実は変わらない。
せいぜい人類の寿命が数時間伸びた程度だ。なんの問題があろうか。
もう少し、もう少しで、母上の悲願は、達成される。
-ウルク・ジグラットの頂上-
マシュ「ラフムがここまで!」
ケツァルコアトル「ラフムの処理は私たちに任せて、マシュは藤丸を護って!」
ジャガーマン「にゃーはは!十匹だろうが百匹だろうがかかってこい!ククるんと私がコンビなら1+1で200!十倍にゃ!」
ギルガメッシュ「ついでに我も護ってもらえると非常に助かる!何せ死ぬ気で砲を操作している故なあ!」
マシュ「はい、努力します!」
既に泥はウルクを侵食している。都市は燃え、地上型のラフムたちが生き残った住民たちを惨殺していく。
そしてここジグラットにも、飛行型が引っ切り無しに押し寄せてくる。
イシュタルは最大出力で宝具を撃つため、既に遥か上空で待機して魔翌力溜め中。
私たちができるのは、のこり数時間を耐え、生き残ることのみ。
マシュ「マスター!!!」
藤丸「っ!来た!」
飛行型ラフムから人影が飛び出して来たのを見て、マシュが盾を構える。
そこに黒い光が――
マシュ「いまは遙か理想の城!!」
アルトリア「約束された勝利の剣!――チッ」
マシュ「間一髪でしたが、間に合いました・・・」
アルトリア「それは、円卓を盾にしたものか。なんたる侮辱、円卓の王の攻撃を円卓で受けるなど恥を知れ!」
マシュ「・・・特異点Fで会った彼女と、姿は同じですが全くの別人ですね」
ギルガメッシュ「それはそうよ。こやつは正しく反転したものではないからな」
藤丸「ギルガメッシュ、それはどうゆう・・・」
ギルガメッシュ「騎士王、貴様召喚されたときは反転などしていなかった。違うか?」
アルトリア「ほう、何故そう思う」
ギルガメッシュ「簡単なことよ。あの巨人を倒したのは黒い光などではない。確実を取るのであれば元の聖剣を使うに越したことはないからな。貴様が反転したのは半ば事故であろう」」
マシュ「そういえば、そもそも何故アルトリアさんがティアマトと一緒に」
藤丸「あの長い時間、膠着状態だった時に召喚したんだと思う」
アルトリア「正解だ、英雄王、人類最後のマスターよ。私は反転してない状態で召喚され、その直後泥の海に落ちた」
ギルガメッシュ「ティアマトの吸収した聖杯で喚べば当然の帰結よな。そして汚染が完了した段階で聖剣を使用した」
マシュ「ですが、あの数時間大きな魔翌力変動は・・・」
藤丸「あの巨体同士がぶつかっていたんだ。サーヴァントの召喚程の魔翌力反応ならいくらでも誤魔化せる」
ギルガメッシュ「しかし、万全を期すために自己改造スキルまで使ったか。まあそうでもしないと聖剣は使えんだろうが」
藤丸「自己改造スキル?」
ギルガメッシュ「母は子にスキルを付与できるのだろう?牛若丸が無限に分裂したように、貴様は変質しても聖剣を使えるようにした」
アルトリア「・・・ク、クク、ハハハハハ!そこまで見抜くか、流石英雄王と言うだけある!」
ギルガメッシュ「で、貴様は何をしに来たのだ?」
アルトリア「当然、お前たちを皆殺しに」
ジャガーマン「とぉーーーーーーう!」
アルトリアの死角からジャガーマンがあの何とも言えない棒を振りかざす、が受けられた。
ギルガメッシュ「叫びながら不意打ちする馬鹿がどこのいる!」
ケツァルコアトル「残念だけどあのジャガーマンは馬鹿デース!」
アルトリア「話をさせたのは集められる時間を稼ぐためか、なんとも姑息な」
藤丸「・・・クソッ!」
大きく腕を振り、地面を殴る。
アルトリア「さて、ではここで人類史を終わらせるとしよう。小娘、貴様の盾が使い物にならなくなるまで何度でも振るってやる、約束された――」
ジグラットの上空、火災でできた雲に、一つ穴が開いた。アルトリアオルタの頭上、その真上に。
アルトリア「―――」
剣を天に掲げたその姿勢のまま、脳天から血を流し、彼女は絶命した。
彼女の命を絶ったのは、一つの魔石弾。
上空で待機し、魔翌力を溜めていたイシュタルには、もう一つ役割があった。
手にしていたのは、ギルガメッシュの保有する財の一つである、既に限界まで魔翌力を溜められた宝石。
それを、一度不意打ちを失敗したあと、宝具を撃つ直前に、アルトリアにぶち込むということ。
イシュタル「なんでそんな回りくどい事するのよ」
ギルガメッシュ「あやつは直感が鋭い。生半なタイミングでは通用せん。故にだ」
ケツァルコアトル「敵の一撃を防いだと油断し、そのまま大きな攻撃の直前、一番守りが薄いタイミングね!」
ギルガメッシュ「まあ失敗した場合の予備もあるが、少なくとも外すなよ、駄女神が」
イシュタル「誰が駄女神よ!!!」
イシュタル「どうよ!綺麗に打ち抜いたわ!」
藤丸「ありがとうイシュタル!」
ギルガメッシュ「たわけ!声が大きいわ!貴様はその時まで身を隠していろ!」
イシュタル「分かってるわよ!じゃあね藤丸、しっかりなさい」
マシュ「イシュタルさん、離脱しました。あとは引き続きラフムの相手とエレシュキガルさん待ちですね」
藤丸「うん、でもこれでなんとか」
ケツァルコアトルたちはアルトリアの消滅を確認すると、すぐにラフムの相手に戻った。この場にいるのは私とマシュと王様。
ティアマトはディンギルの砲撃で足が遅くはなっているが、着実に進んできている。気は抜けない、なんて思いながらティアマトを見ると、何かしている。
そして脳裏に浮かんだ「死」という単語。それは突然交通事故で死ぬような、そんな気持ちが――
押される、いや弾き飛ばされる。態勢を崩しながら見ると、それは王様。そして王様の胸には、穴・・・?
マシュ「ギルガメッシュ王!?」
ギルガメッシュ「騒ぐな、致命傷だ。ケツァルコアトルめが言っておった一番守りの薄いタイミングの攻撃、さらには狙いも正確ときたか、あの体格で器用な母だ」
藤丸「そんな、王様!」
ギルガメッシュ「騒ぐなと言ったであろう。あと話しかけるな、気が散る」
マシュ「待ってください、そんな傷でディンギルを動かしたら」
ギルガメッシュ「ここで引いては全てが藻屑!藤丸立香、人類最後のマスターよ、もう我は戦えぬと申すか。無理だと言うか?我は限界だと?もはやウルクは戦えぬと?貴様はそういうのか、藤丸立香!」
藤丸「―いいえ。いいえ―!ウルクはここに健在です!」
ギルガメッシュ「――よし、よく吠えた」
マシュ「っ!飛行型ラフムがかたまって来ます!あれではジグラットが耐えられません!」
藤丸「ケツァルコアトルさんとジャガーマンは!?」
マシュ「だめです、ほかのラフムたちの対処でいっぱ、きゃっ!」
ジグラットにラフムたちが一つの塊として押し寄せる。それは物量による圧倒、単純ながら、一番効果的な戦法。
その黒い塊は、ジグラットの天井部分を壊し――そこで、意識が落ちた。
???「・・・丸、藤丸、藤丸!」
藤丸「ハッ!」
跳ね起きる。そこにいたのは、ケツァルコアトルさん。
ケツァルコアトル「眼が覚めました?身体に異常はありませんか?」
藤丸「は、はい、大丈夫です」
ケツァルコアトル「ならOKです!」
マシュ「せ、先輩・・・」
ジャガーマン「おっとまだ動くな少女。あなたの方がダメージ大きいんだからもう少し休んでおくべし。先生からの忠告です」
藤丸「・・・そういえば、王様は!?」
ギルガメッシュ「ここにいる」
言われて振り返ると、王様はティアマト神を見据えていた。そしてティアマト神は、鎖に縛られていた。
藤丸「いったい何が・・・」
ギルガメッシュ「さてな」
ジャガーマン「もうすっごいのよ!突然地上から鎖の束が出てきたと思ったら、それがそのまま母さんを覆ってね、そのままああやって地面に縛りつけちゃって、もう凄いのなんの」
ケツァルコアトル「五月蠅い、黙りなさい」
ゴッと鈍い音と共にジャガーマンが頭から地面にめり込んだ。痛そう。
ケツァルコアトル「まあジャガーの言った通りよ。それからラフムたちもこっちに来なくなったから、お姉さんたちも戻ってきました」
ギルガメッシュ「さて、そろそろ最終局面であろう。藤丸とマシュよ、心するがいい」
藤丸、マシュ「はい!」
ギルガメッシュ王の言葉に呼応するかのように、鎖は砕けた。そして同時にエレシュキガルから連絡が入る。
そして、空から姿を見せる金星。イシュタルの渾身の宝具がウルクを飲み込み、冥府へ崩落していく中、血の気の無くなった王様が先に落ちていくのが見えた。
藤丸「王様ー!!!」
王様は気にするなとでも言うような顔をして、闇の中へ落ちていった。
冥界でのティアマト神との決戦。
エレシュキガルの助力もあり、大きく力を削ぐことに成功するが、それでもティアマト神は原始への回帰をして冥府を侵食し、地上へ出ようと動き出す。
さらに、一体一体が魔神柱クラスのラフムたちが十一体も現れ、私たちの行く手を阻んできた。
そしてティアマト神のケイオスタイドによる攻撃。しかしそれは私たちにかかる前に、花に変わった。
マーリン「いやーお待たせ!アヴァロンから走ってきたが、なんとか間に合ったようだ!」
藤丸「マーリン!?」
マーリン「うん!ところでケツァルコアトルってどこにいるかな。できれば会いたくないんだが」
ケツァルコアトル「私はあなたの後ろにイマース。鮮血神殿ではよくもやってくれましたねぇ」
マーリン「ぁ」
ケツァルコアトル「とはいえ、今はやってる場合じゃないのは分かってます。後で覚悟しなさい」
マーリン「ようし、なるべく戦闘を長引かせよう!と言いたいが、そうも言ってられないし真面目にやるぞー!」
さらに、第六特異点で会ったキングハサンの助太刀で十一のラフムたちを撃破。そして昇るティアマト神を、自力で現界してきたアーチャーのギルガメッシュ王が叩き落し、ついにティアマト神本体との決戦となった。
ロマニ『今なら山の翁の力で死の概念が付与されている、戦力も十分だ。勝つには今しかない!』
藤丸「はい!マシュ、お願い!」
マシュ「マシュ・キリエライト、出ます!」
マーリン「おっと、戦闘において最初に重要なのは戦う前だよ。君たちの道行きを手助けしよう、行きなさい!」
イシュタル「ふん、シュメルのことはシュメルで片を付けるわ。母さん、覚悟!」
ケツァルコアトル「こっちにも支援を回しなさい!ジャガー、合わせて!」
ジャガーマン「世界を護る戦いに善も悪も無いってか!木々がないのが残念だがぁ、それでも出力は120%ォ!」
山の翁「神託は下った・・・」
ギルガメッシュ「フハハハハハ!!我らが母が相手ならば慢心などせん、全力で行かせてもらおう!」
全員の総力をかけ、全力でティアマト神へ攻撃をする。
ジャガーマン「にゃー!!!泥が!泥が!ドロドロ被さってくるー!!」
マーリン「私も攻撃してるんだけどなぁ!それ!」
ケイオスタイドはマーリンが逐次無力化。
ティアマト「■■■■■■■■―――!!!!」
藤丸「マシュ、宝具を!」
マシュ「了解です!」
ティアマト神の攻撃のうち、まともに受けられないものはマシュの宝具による相殺。
ラフム「ギギ」
ギルガメッシュ「不快よ、疾く失せよ」
マーリンが消すより先に出てくるラフムはギルガメッシュの大規模攻撃でついでに圧殺。
互いが互いにできることを最大限に使う、文字通りの総力戦となった。
そして――
ティアマト「■■■■―――」
ロマニ『今までで一番の出力だ!おそらくそれが最後の攻撃になる!』
藤丸「マシュ、宝具を―」
ギルガメッシュ「その必要はあるまい。我が止めを刺してやろう。藤丸、令呪は一つ残っているな、寄こせ」
藤丸「――令呪をもって命ずる!ギルガメッシュ、母に止めを!」
ギルガメッシュ「賜った」
そう言って、ギルガメッシュは剣を抜いた。
目を覚ます。
そこはウルクの街。どうやらいつの間にか、冥界から出てこれたようである。
そしてそばには、まだ眠っているマシュの姿が。
藤丸「マシュ、マシュ」
マシュ「・・・ん、おはようございます、先輩」
藤丸「うん、おはよう」
朝日を浴びて、マシュは輝いている。そんなマシュを見ていると、恥ずかしいのか顔を赤くしてそっぽを向いた。
かわいい。
ジャガーマン「いやー若いっていいにゃあ」
いつの間にか真横に居たジャガーマンがニヤニヤしながらこちらを見ていた。
ケツァルコアトル「邪魔をしない!」
ジャガーマン「ふぎゃっ!」
マシュ「ジャガーマンさん、なにかを叩きつけられ地面に埋没しました!・・・ってケツァルコアトルさん、手にしてるのは」
マーリン「やあ、マーリンお兄さんだよ・・・」
藤丸「マーリン、なんかボコボコだけど大丈夫・・・?」
マーリン「いやーまさか一通りの関節技を決められたあと、鈍器として使われるとは・・・」
ケツァルコアトル「まだまだ余裕みたいね。次は地面に百回くらい打ち付けてみようかしら」
マシュ「ケツァルコアトルさん、そうしますとマーリンさんが死亡してしまうので、やめていただけると・・・」
ケツァルコアトル「んー、わかりました!マシュがそういうならそうしましょう!・・・と、そろそろ時間みたいね」
ジャガーマン「ありゃ、もう退去か。もうちょっと遊びたかったんだけどなー」
ケツァルコアトルとジャガーマンが光に包まれる。つまり、もういなくなってしまうということ。
藤丸「そっか・・・」
ケツァルコアトル「そんな悲しい顔しないで!あなたたちには笑顔が似合ってます!」
ジャガーマン「まあいつかどこかで会うかもしれないわけだしにゃ。そんときゃよろしく頼むぜ、マスター!」(※この後カルデアで会います)
そう言って二人は還っていった。
マーリン「では私もアヴァロンに戻るとしよう。最後にジグラットの上で女神と王が待っている。行くといい」
マシュ「はい、ありがとうございました。マーリンさん」
ギルガメッシュ「来たか、カルデア」
イシュタル「遅いのよ、女神を待たせるんじゃないわよ」
マシュ「申し訳ありません!」
藤丸「ちょっとイシュタルさん、マシュに謝らせないでください!」
ムーとイシュタルを指し、ちょっとした口論をする。それをあわあわして止めようとするマシュと、大笑いする王様。
もうすぐこの世界は消える。それでも、この時間は確かにあったのだ。
ギルガメッシュ「さて、我はもう一仕事残っている。ああ、これは助力など必要ない故、早々に帰るがいい」
イシュタル「私ももともと聖杯が喚んだサーヴァントじゃないからね、もう少しこの世界を見ていくわ」
つまり、二人はここに残るらしい。なら自分たちの出る幕は、ここまでだろう。
藤丸「マシュ、帰ろう」
マシュ「はい!」
ロマニ『こっちの準備も整った。レイシフトを実行するよ。3、2、1――』
これでSSは終わりです。誤字脱字も多い拙い文章でしたが、ありがとうございました。
ちょっとした余談をば。
知っている人は分かると思いますが、このアルテラさんはFate/EXTELLAに登場するアルテラさんがベースになってます。
とはいえあくまで人理によって召喚された存在なので、肉体は英霊アルテラ、中身は巨神アルテラの子機、といった感じです。
まあ中身というか、EXTELLAでの出来事の記憶を持った英霊アルテラ、と言った方が近いですね。
因みにアルテラさんが召喚された理由も一応作ってて、途中で出てきたシャドウ巴御前への人理のカウンター召喚といった形です。
本当は最終決戦で純粋な英霊アルテラ(ローマの記憶を持ったアルテラ)を出そうかとも思いましたが、グダりそうな感じがしたのでやめました。
以上になります。