終わりと始まりのものがたり
渡辺綱(セイバー)装備時のみ
自身がフィールドにいる間
味方全体に〔魔性〕特攻状態を15%付与&〔鬼〕特攻状態を15%付与
イラストレーター
moryo
解説
―――そうして、全ては終わっていた。
醜い爪痕、引き裂かれた家屋、砕かれた家財。
そしてそこに倒れ伏した、一人の女。
間に合うも間に合わないもない。
最初から、間違っていたのではないか。
触れ合うことを期待していた訳ではない。
眺めることもよしとしなかった。
ただ、生きてくれていれば。幸福でさえあれば。
それで良いと思っていたのに。
見ろ、現実はこの有様だ。
彼女は死んだぞ/お前のせいだ
彼女は殺されたぞ/お前のせいだ
あの鬼は逃げたぞ/お前は殺さなければならない
目を逸らすな/目を逸らせ
金の御髪を刻みつけろ/そう成り果てたのではなく
あれの首を切れ/お前が自刃しろ
誰を責めればいい?/誰も責めてはならない
―――そうして、男は迷妄する思考を止める。
鬼は、斬らねばならない。斬って殺す。
……それだけだ、それだけなのだ。
ダメだ、考えろ。考え続けなければ。
死んでも、死ぬまで、腐り果てても。
しゃぼん玉のように浮かんで消えた、
あの眼差しを思い出す。
静かに、全く何の感慨も浮かべることなく。
自分を見据えていた、少女を。
罪がある。
鬼に罪があり、人に罪があり、少女に罪があり、
己に罪があった。
罪だけではない、責務があろう。
刀の柄を、握り締める。
誰にも譲る気はない。奪われるなどもっての外。
「あれを斬るのは、俺の役割だ」
―――綱、綱、綱ァッ!
……迫る鬼の爪。
揺らいでいた心に、何かが満ちる。
体を回し、腕を回し、刀を振るう。
この戦いの真実も、結末も、
やがて時間の流れに消えるのだろう。
誰にも理解できない、誰にも理解されない、
俺と彼女の殺し合いを。
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